【座談会に参加した店長たち(上左から)】
BOOKOFF PLUS 熱田国道1号店:立花直幸さん
ブックオフ歴10年の自称・お調子者。スタッフさんから「お酒を控えて」「ダイエットを」と言われるが、リングフィットアドベンチャーとFit Boxingを2日でやめた過去を持つ。
BOOKOFF 小倉旦過(たんが)店:安藤智恵さん
ブックオフ歴約20年の大ベテランで、みんなのオカン的存在。意外にもスタッフからは「おっちょこちょい」「うっかり」と言われることが多いとか。愛読書は『ONE PIECE』『BLUE GIANT』『SLAM DUNK』。
BOOKOFF PLUS 286号仙台鈎取(かぎとり)店:松尾直輝さん
ブックオフ歴8年。見た目通りの温厚な性格。終わったことは気にせず常にポジティブ! スタッフさんからは「犬っぽいですね」と言われることが多い。商品の補充とスポーツ観戦が好き。
BOOKOFF PLUS 町田旭町店:渡邊 雅嗣さん
ブックオフ歴17年とベテランなのに、スタッフさんからはなぜか「ブックオフらしくない社員」と評される。最近は劇場版「プリンセス・プリンシパル」の入場特典を集めて、推しのトレードを行うのが日課。スニーカーはナイキ派。
BOOKOFF イオンモール成田店:小室正光さん
ブックオフ歴10年。しっかり相手の話を聞くことに定評がある温和な店長。しかし、ひとたび本の補充を始めると脇目も振らず集中するという噂。最近の楽しみは2歳のお子さんとリングフィットをすること。
店長ってどんな仕事をするの? 好みがバレる棚づくりとは
立花 私はもう入社して10年目になります。
小室 店長の仕事の大部分はマネジメントですから、現場の経験が必要とされますよね。
安藤 店舗と雇用を守り、そして利益を出す。私を含めたスタッフさんがご飯を食べれないといけない、責任重大です。
松尾 やりがいを感じる職場を作ることも大事ですね。
渡邊 たしかに。働く中で接客や棚作りの楽しさを共有できることも魅力です。
安藤 お店の個性は店長次第と言ってもいい。
小室 店長によって、お店の雰囲気は全然違いますよね。店長とスタッフさんの関係性がいいところはお店の雰囲気もよい気がします(笑)。
松尾 あるある。
安藤 品揃えにも個性が出ますよね。私は「書籍を売りたい」という強い気持ちを持っているんですが、「新書より単行本の方が気合が入ってますね」とスタッフさんに言われて、初めて自分の傾向に気づきました(笑)。同じように「ここの店長はこれが好きなんだな」ってお店に入った瞬間にわかります。
一同 わかる、わかる。
渡邊 小室さんが店長を務めるBOOKOFFイオンモール成田店は『ONE PIECE』関連の品揃えがすごいって有名ですね。
小室 外国人のお客様が多いので、『ONE PIECE』はホビーも含めて充実していますね。全面に押し出したレイアウトにしています。
安藤 現場を担当しているスタッフさんは生き生きしているんじゃないですか?
小室 そうですね。SNSでも積極的に発信しますし、それが結果的に仕入れにつながることもあります。
渡邊 立花さんのBOOKOFF PLUS熱田国道1号店のプラモデルコーナーもすごいと思いました。まず置いてある量が尋常じゃない。同じブックオフとは思えなかった。
立花 プラモデルの買取価格は、他店と比べて高額なわけではないんですよ。ただ「買い取らせていただきたい」「店頭に並べさせていただきたい」という情熱が、すごいんです。査定のときにも価格の理由をしっかり説明させていただくので、口コミでこちらの情熱が伝わるようですね。
松尾 スタッフさんの情熱はかならずお客様に伝わりますし、自らやる気を持って売り場を作ってくれるようになる。いい循環が生まれますね。
渡邊 私もそういう現場の熱意からは、気づきを与えられたりします。とても刺激になりますね。
【プラモデルの品ぞろえが半端ない熱田国道1号店の記事はコチラ】
【店員あるある】ブックオフの職業病って?
安藤 みなさんにお聞きしたいんですが、やまびこ(※1)が聞こえないと気になりませんか? 最近はコロナで中止しているので、あれがないと物足りない。みなさんのあるあるが知りたいな。
※1「やまびこ」
「いらっしゃいませ! こんにちは」とブックオフの店員が次々に挨拶する様子のこと。活気ある店内にする他、お客様に店員の場所を知ってもらう、防犯になる、などの役目もある
立花 私は、来店されたお客様に挨拶をして、会釈や挨拶を返されると照れます。
安藤 照れながらもきちんと返したいところですよね(笑)。
松尾 スタッフさんのメガネ率は高めですね。本やマンガをよく読むからかな?
渡邊 仕入れ(買取)が少ない時期は、売れるものがないか……と街で資源ごみをじっと見てしまうことがあります。休憩中にとりに行こうか悩んだこともあるくらい(笑)。もちろん違法なのでやりませんでしたが、それくらい買取を渇望しているということで。
小室 わかります。買取量が生命線(※)ですから。
※お客様から買い取らせていただく品物が「仕入」に当たるため
渡邊 あと、黒い服を着ている人と街ですれ違うと、ブックオフの制服である黒いポロシャツに見えてどきっとしません? 「同業者かな?」って思います。
安藤 わかります!
松尾 お客様が財布の中からブックオフのカードを探しているときに、こちらが先に見つけちゃうことありませんか。そこにありますよって。
立花 レジが混雑しているときは「お客様、おそらくそれだと思います」って実際に言うことも。
小室 自分で新刊を買うときは、高価買取の対象を選びがちです。職業病ですね。
立花 職業病といえば、新品のDVDを買ったときに盤面に傷がないかを見てしまうクセを直したいですね。新品だから傷があるわけないのに。
安藤 わかる! 買取時に傷があるとショックですから。
小室 ディズニーやジブリは傷つきがちですよね。人気商品ですけど、目立つ傷がついているときは買い取らせていただくか、本当に悩みます。
松尾 アンパンマンもそうですね。小さなお子さんが見るものだから傷はつきもの。仕方ない……。
安藤 大人でも特定のアーティストのCDは傷が多いですね。中でも海が似合う男性グループものは、その傾向あり。砂で転がしたのかなって(笑)。
渡邊 屋外で聴くことが多いですからね。
安藤 逆にクラシックやイージーリスニングのCDは、傷が少ない気はします。
小室 きっと室内で静かに聴くからですね。
渡邊 持ち込まれる全ての商品に物語があるんですよね。
安藤 飲み屋さんでブックオフで働いてると知られると、「ONE PIECE全巻あるけどいくらで売れる?」とか言われません? 最近は『鬼滅の刃』が多いですね。
渡邊 そんなときはなんて答えるんですか?
安藤 「とりあえず持ってきてください」って。
立花 店長のカガミだ。
小室 あとは、休日や休憩中に入ったブックオフ以外のお店でやまびこに反応しがち。繰り返しそうになっちゃう。実際に声に出しかけたこともある。これはあるあるすぎるかな。
松尾 自分はボールペンがよくなくなります。逆に他のスタッフさんのものを間違って使っていることもあって、お客様からの問い合わせや、引き継ぎ、クレジットカードのサインなどで頻繁に使うんですが、使ってから「これ誰のだ?」って気づくんです。
安藤 わかります。そして、気づいたら自分のがまた戻ってくる。
松尾 ペンは天下の回りもの。「お気に入りのペンをなくした」と悲しんでいるスタッフさんがいたので、安いのを使いなさいと伝えました。
立花 お気に入りのものを身につけたい気持ちはよくわかるのですが、仕事中は壊れたり汚れたりしますしね。
松尾 靴も汚れますよね。白は汚れるから「やめておきな」と。
安藤 みなさんスニーカーですか? 黒を履いてる方が多いのかな。ニューバランスを履いている率が高い気がします。
渡邊 私はNIKEを履いています。やはり疲れない靴がいちばん。動きやすくて、クッション性が高いと嬉しい。ということでNIKE AIR MAXがおすすめですよ。
安藤 今度試してみます。
【店長あるある】店長ならではの苦労がたくさん……!
安藤 ここからは店長としての悲哀も聞きたいですね。大変なのは、やっぱりシフトを作るときでしょうか。
小室 シフトは大変ですよね。
渡邊 コミケ(※2)の期間は特に人手が足りなくなる。
※2「コミケ」
コミックマーケットの略。毎年8月と12月に東京国際展示場で開催される大規模な同人誌即売会のこと
松尾 どこでもそうなんだ。
安藤 あとはコロナウイルスが流行ってからはスタッフさん同士の会話も制限されるようになったので、コミュニケーションが難しいですよね。
小室 社員同士で飲みに行くことも無くなったので「できる限りコミュニケーションをとらないと」って思います。
安藤 ただスタッフさん同士が仲良いと、いっぺんに休んでしまうのが悩みですね。「私も呼んでよ~」ってシャレで言うと「あ、行きます?」って聞かれるけど……いや、お店に誰もいなくなっちゃうよ!って。
小室 あと、独身スタッフさん同士は付き合いがちですね。結婚報告を受けて初めて知ったり。店長には言いづらいのかな。
松尾 恋愛をオープンにしない人は多いですよね。
小室 繁忙期に2人同時に休みをとって「あれ?」って思ったり。
安藤 シフト希望で恋愛模様がわかることってありますね。私は気になったら聞いちゃいますね。できる限りの応援はしたいし、精神的にもケアしたいので。
松尾 仕事ができる学生スタッフさんが就活をしていると、心のどこかで「お店に残留しないかな」と思ったり。シフトについてはみなさん頭を悩ませているんですね。すこしホッとしました。
安藤 みなさんはお店の責任者であるわけですが、他店はやはり気になりますか?
立花 自分の店の改善点は、他のお店でも目がいきますね。うちは雑誌にもう少し力を入れたいと思っているので、充実しているお店に入ると勉強になります。
松尾 掃除の状態はチェックしちゃいますね。いいところを見つけたら自分の店にフィードバック。
小室 素敵なお店だと、どんな人が店長なんだろうって思いませんか。誰だかわからないんだけど。
渡邊 そう、ネームプレートにも「店長」って書いてあるわけじゃないから。知り合いでもない限りわからない。
松尾 風格がある人もいるけど、オーラがない人もいる(笑)。
安藤 責任者を呼んでこいと言われて、「実は私が」と言ったら「お前か!」って言われたことありますね(笑)。逆に「店長である私が対応させていただきます」と言ったら、「若い子としゃべりたいんだよ」と言われて、ずっこけたことも。
渡邊 スタッフさんとはどうやって信頼関係を築いてますか?
松尾 まずは、ちゃんと話を聞くことですね。自分のことより相手のことを知る。そして自分を知ってもらう。うちの店は勤続年数が長いスタッフさんが多く、ずっと一緒にいるからこそ、気遣いは忘れないようにしています。
立花 私は年上のスタッフさんともフランクな口調で話してしまうこともありますね。向こうもタメ口だし、家族みたいな関係なのかなって思ってます。
安藤 うちもマンガ論争になると年齢の上下もなく白熱しますね。あれ、燃えるんですよね~。
松尾 友だちみたいに思ってくれてるんですね。
立花 私は独り身なので、母親くらいの年齢の人たちにいつも心配されてますね。店を移るたび第2の母が現れる。各地に私の身を案じてくれる母がいます(笑)。
安藤 それは立花さんの人徳では。
渡邊 僕は今使っている椅子の背もたれが壊れているんですが、自分の備品は後回しにしがちですね。
一同 わかるわ~。
安藤 しかし、店長同士が集まると、ついワイワイしちゃいますね。
立花 みんな同じ悩みを持っているんだ。
松尾 店の立地や規模によって悩みは違うと思うけど、わかる部分が多すぎてなんだか嬉しいですね。
店長は見た! 忘れられないスタッフ&お客様
安藤 店長は大変な仕事だけど、楽しいこともありますよね。記憶に残っている出来事ってありますか?私は、常連である年配のお客様たちが、いつも食べ物をくださるのが微笑ましくて(笑)。
松尾 愛されてますね。どこの店舗もそうですけど、朝一の常連さんっていらっしゃいますよね。
立花 2~3日顔が見えないと心配になったりしてね。
渡邊 お客様や常連さんのことではないんですが、私が強く記憶に残っているのは、DVD5,000円以上半額セール。すごい混雑で、お昼すぎには全て売り切れていたんです。あれは気持ちよかったですね。
※渡邊さんが以前働いていた店舗で実施したセールであり、BOOKOFF PLUS 町田旭町店で行われたものではございません。また現在、同様のセールを開催する予定はございません
立花 それはすごい! 私はご自身が歌っているCDを売りに来られた方にびっくりしました。
安藤 サインを書いて貰えばよかったのに、ってそしたら売れないですね(※)。
※商品に書き込みがある場合は、原則、買取をお断りしております
松尾 出張買取で訪問した先が一軒家ほどの大きさの蔵で、査定になんと2日間かかったことがありますね。依頼主である年配の女性とはずっと一緒にいたので、今でもお顔を覚えています。
立花 私は仕事とは全く関係ないけど。夕礼(※3)で星野源さんと新垣結衣さんの結婚を発表したら、学生スタッフさんが誰も反応しなかったときですね。
※3「夕礼」
夜番のスタッフさんが出勤したら行う挨拶・情報共有などを指す
安藤 えー!? あれは衝撃でしたよね。うちはスタッフさんが号外みたいに伝え回ってましたよ。
立花 でしょう。でも、うちは誰も驚かなかったの。本当に好きなこと以外に興味がないんだなって。
小室 立花さんの話で思い出したけど、うちのスタッフさんで暗い顔をしている子がいて、どうやら大好きな声優が結婚を発表したらしく、全く生気が感じられなかったのでその日は早退させました。
安藤 自由な職場ですし、その対応ができる小室さんは素敵だと思いますよ。
いろんな人と出会えるこの職場が好き
安藤 さて、そろそろこの座談会もおしまい。楽しい話がたくさん聞けましたが、みなさん楽しそうなことが印象に残りました。私はFC(フランチャイズ)時代から数えると20年以上働いているのですが、やりがいのある職場であることは間違いありません。
小室 そうですね。若いうちに店長経験を積めることが大きいし、目標となる先輩がたくさんいたことは本当にありがたいと思っています。
渡邊 個性的な社員・スタッフさん・お客様に囲まれてますからね。楽しくないわけがない。
立花 幅広い年代の方と働けて、自分の人間力も上がった気がします。
安藤 いろんな人がいますもんね。職場を一言でたとえると、第2の家、いや、もはや家ですね。アットホームじゃなくてホームです。
小室 お客様もその一員。お客様には僕らもお声がけさせていただくんですが、もっと気軽に話しかけていただければと思います。仲良くなっていただけると、お得な情報をお話できるかもしれません。たとえば、カウンターのVカート(※4)に載っている商品だって、声をかけていただければお出しできますから。
※4「Vカート」
Vの形をしている作業用カート。通常カウンター内に置かれている
松尾 この仕事をしてなかったら、出会えなかった人もたくさんいます。出会えたことに、感謝です。
安藤 店長というのは、プレイヤーよりマネージャーとしての役割が多いから、ときに孤独もあって、それを共有できたのが今日の収穫でした。
立花 地域差があるのかと思ったら、そんなにかわらないんですね。
小室 僕たちは一人じゃなかったんだ(笑)。
渡邊 座談会の最中にメモをとろうとしたら、ボールペンがないことに気がついて、「ああ、これか」と納得しました。今度お店に行くときは店員の胸ポケットをチェックしてみてくださいね。
安藤 今日は、みなさんありがとうございました!
TEXT:キンマサタカ
PHOTO:参加者の皆様&ブックオフをたちよみ!編集部
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安藤 さて、今回集まった店長は、ブックオフで長く働くベテランばかりです。