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長見祐輔さん(34)

2011年ブックオフコーポレーション株式会社にアルバイト入社。2019年に社員登用され、2020年11月現在はBOOKOFF大阪千島ガーデンモール店で店長を務める。ロックバンド「裸体」では“ペーター”の名でボーカル&ギターを担当。ミニアルバム『明日を想う』『新世界』ほか数枚を全国リリースしている。

フジロックに出演!!ロックバンド「裸体」ボーカルとしての顔

――長見さんは、ブックオフ入社前からバンド活動をされているんですよね。

「裸体」というバンドでボーカル・ギターをやっています。大阪をメインに、全国のあちこちでライブしてきました。リリースしたCDは、全国流通しています。

ロックバンド「裸体」のライブ写真
エモーショナルなリフと、躍動感あふれるライブが魅力のロックバンド「裸体」。

――あの、バンド名はどうして「裸体」なのでしょうか。

結成当時のメンバーが残っておらず、由来はわからないんです。響きがちょっとアレなので、関東の某ラジオ局で放送NGが出たり、YouTubeでPVやライブ動画を検索しにくくなったりしたことがあります(笑)。

――いろいろ規制が入りそうですね(笑)。どんなバンドなのですか?

4人組のロックバンドです。ライブパフォーマンスと楽曲の良さが、持ち味だと思っています。ハードコアやポストロック、海外のインディーシーンといったアンダーグラウンドな音楽がバックボーンではありますが、キャッチーで歌いたくなるような曲も多々ありますよ!

ミニアルバム『新世界』に収録されている『原動力』。オーディエンスを巻き込むノリのいい一曲です。

――2018年には、フジロックフェスティバルの「ROOKIE A GO-GO 」(※1)に出演されていますよね!

※1「ROOKIE A GO-GO 」
新人アーティストの登竜門といわれるステージ

フジロックはホンマ、奇跡的なライブでした。

当日はテントが吹き飛ばされるほど天気が悪かったんです。でも、あの雨と風がかえって演出みたいになって、テンション上がりました。ライブの後には、たくさんの人に「『BECK』(バンドマンたちの成長を描いた漫画)のコユキに見えたよ!」と声を掛けてもらえて。とにかく、本当に別世界でしたね。

フジロックフェスで大雨に見舞われた「裸体」
フジロックでは暴風雨に見舞われるも、かえってドラマチックなライブに。

――同じ年にコヤブソニックにも出演されていました。大きな音楽フェスに出演して、変化はありましたか?

世間がイメージするような変化はなかったですね。フェスに出演したから売れる世界ではないし、そういう意味では浮き足立っていませんでした。

ただ「フジロックのROOKIE A GO-GOに出た」という事実は、同世代の心を震わせたみたいでした。僕らのバンドはメンバーが全員30歳を超えているんです。「俺たちもまだまだやれる!」と思ってもらえたようで、ライブやSNSでそういった声を聞くことが増えました。

――詞や曲は、どのように生まれるのでしょうか。

作詞は一番苦手な作業で、なかなか書けない。僕はものすごくポジティブなので「大丈夫! 心配するな!」みたいな、元気の押し売りのような詞を書きます。仲の良いバンドが解散したり知人が亡くなったりすると、影響を受けて書くこともありますね。

曲はメンバーと作りますが、シャワーを浴びているときに浮かぶことも多いです。

――シャワー中ですか?

そうです(笑)。そのまま歌い続けて、風呂場から出た瞬間にパッと拭いて、全裸でパッとメモを取りに行って。

――(まさに、裸体……!)

ニートからアルバイト入社 長見さんのブックオフライフ&店長としての顔

――2011年、ブックオフでアルバイトを始められていますよね。

昔から古本や古着が好きで、ブックオフにもよく行っていたんです。このときは、好きなものに直結する仕事がしたいと思って、BOOKOFF 大阪心斎橋店で面接を受けました。

当時の僕は髪の毛が長くて、2カ月もニートだった。よく僕みたいな奴を採用してくれたな、と思いますね(笑)。

若い頃の長髪の長見さん
若かりし頃の長髪の長見さん。ナイフみたいに尖ってます……!?

――入社後は、どういう変遷をたどられたのですか?

そのまま、心斎橋店で7年働きました。仕事が嫌だと感じたことは一度もないですね。たくさんコミュニケーションを取りながら、いろんな人に支えられて、ここまできました。

――社員を目指したのには、何か理由があったのでしょうか?

結婚を意識するようになったからです。ただ「(自分が)社員をやれるのか?」という不安は、ありました。

でも「好きなものがあるなら、できるはず」と思い直しました。心斎橋店にいた頃『ガロ』や『アックス』といったニッチな漫画誌が好きで、サブカル棚を作らせてもらった経験があったんです。

――「好き」の力は大きいですね。売り場に生かされることはありますか?

大阪千島ガーデンモール店には、僕が作った「Music Recommend」という棚があります。良い音楽やバンドをたくさんの人に知ってもらいたい。そういう思いから、自作のコメントPOPを付けて紹介しています。

大阪千島ガーデンモール店のおすすめの棚
長見さんオリジナルの商品棚。自分の耳で聞いて「良いな」と思ったCDを中心に陳列しているそう。

――好きなものがあると、お客様とも仲良くなれそうですね!

「僕この売り場担当しているんです」と言うと、話を広げてくれるお客様はいます! そういうときは、僕から踏み込んで声を掛けることもありますね。楽器好きな方と仲良くなって「(買取に)持って来てくださいよ~」と言ったら本当に持って来てくださったこともありました。

――コミュニケーション能力、高いですね……。

僕は慣れ慣れしいんですよ(笑)。バンド活動ですごくたくさんの人と触れ合ってきたので、その経験が生かされているかもしれません。

スタッフさんとも、とにかく会話をするようにしています。そのせいかわからないですが、周りの社員さんに「お店の雰囲気が明るくなったね」と言われるようになったんです。

――店長のやりがいと、苦労を教えてください。

自分とスタッフのやりたいことが違うときって、ありますよね。そのとき、どうやって温度感を合わせていくかというところは、やりがいでもあるし苦労する部分でもあります。いや、でも一番の苦労は売上、利益といった数字が関わる業務ですね……。ザ・文系なので、本当に数字に弱いんです。もっと勉強しないと。

レコードを触りながら、はにかむ長見さん
はにかみながら取材に応じてくれた長見さん。「数字に弱い」は意外でした。

支え合って生きていきたい 2つの道を行く、長見さんの哲学

――二足のわらじ、ぶっちゃけ大変じゃないですか?

社員になったとき、周りから「バンドはできなくなるね」と言われました。家庭と仕事、音楽活動で揺れ、メンバーとの空気が悪くなったこともありましたね。「なぜうまくいかないのか」と憤ったりして、あの時期は本当に悩みました。

――バンドをやめてしまおうと思ったことは?

全くなかったです。飯を食っていくことだけが音楽ではないので、やめる必要性を感じませんでした。むしろ僕は「いや、そうじゃないやん」という姿勢を、みんなに見せたいと思っているんです。

――「そうじゃないやん」ですか。

就職や結婚でバンドをやめてしまう人が多いんです。僕たちは話し合いながら、そういうのを全部取っ払ってやってきました。

真剣に語る長見さん

――二足のわらじを履きこなすために、必要なことってなんでしょうか。

人に迷惑を掛けすぎないように、迷惑を掛ければいいと思います。僕は1人じゃ1の力しか出せない。なんにもできません。でも4人だったら10の力が出せる。曲作りでも、周りからエッセンスをもらって「そういうアプローチあんねや」と驚くことがあります。

仕事でも同じですね。売り場作りに関して「こういう方法もあるよ」と提案もらって「なるほど!」と感じることが本当に多いんです。助けてもらっています。

そういう意味では人を頼って、迷惑を掛けてもいいと思うんです。

ロックバンド「裸体」のメンバー
長見さん(中央)が「迷惑を掛けてもいい」と思えたバンドメンバー(上から時計回りに:るんるんさん、溝渕翔平さん、ハツカワカズヤさん)

――迷惑を掛けないように掛ける。今の時代、あまり聞かない言葉かもしれません。

人との関係が希薄な時代ではありますよね。でも、僕は今後もガンガン人を頼って生きていくつもり。そして、僕自身も人に頼ってもらえる存在でありたいです。

ブックオフ西日本支社の赤津嘉一郎支社長のお話を聞く機会があったのですが「愛に生きる」と仰っていたんです。とても共感します。僕は、愛し愛されて生きていきたいんです!

仕事も音楽も、好きなら続けろ 人生を2倍楽しむためのメッセージ

――最後のリリースは3年前ですね。今後リリース予定はありますか?

仕事の合間に月1~2本ペースで録音していくので、時間はかかりますが、2022年くらいにフルアルバムを出したいです。

――楽しみです! バンド活動そのものへの展望はありますか?

仕事が忙しくなってきて、ライブが年1回しかできなくなっても、大きいライブハウスでバン! とやりたいですね。大規模なライブを少ない本数で実現させるのはめちゃくちゃ難しくて、やってる人はあまりいないんです。

ライブハウスで演奏するロックバンド「裸体」

――挑戦ですね。ブックオフでは、どんな挑戦をしていきたいですか?

ブックオフは僕にとって、自分の感性や好きなことを生かすことができる場所でした。仕事を通じて「やっぱり音楽好きだな」と再認識させてもらうこともあるし、それがダイレクトに売上に響くこともある。

ただ、目的は必ずしも大きい店舗に異動したり、昇進したりすることでなくてもいいと思うんです。ブックオフで働く人の選択肢を広げてあげられるような働き方を示せたらいいなと。

スタッフにほほえむ長見さん

――新しい働き方を提案! 夢がありますね。

社員になってまだ2年目ですから、現実が見えてない部分もありますよ(笑)。ただ、そのための下積みが今だと思っています。

――ブックオフで働くスタッフの中には、声優や漫画家の卵もいます。そういう人たちにメッセージがあれば、お願いします。

夢があるなら「やれる理由を探してやろうぜ」と伝えたいです。できない理由を見つけることは、簡単にできます。でも、好きなことを続ける道を開きたいなら、変化を恐れないでほしい。

そして、どんな場面でも大事なのは「人」です。

迷惑を掛けてもいい、と思えるような人に、たくさん出会ってほしいですね。僕もたくさんの人に支えられてきたので、今度は支える側でありたいなと思います。

ギターを背景にほほえむ長見さん

ブックオフで働くこともバンド活動もシンプルに好き、と語ってくれた長見さん。その根底には、人に支えられながら育んできた不屈の精神がありました。

※この記事は2020年11月時点のもので、長見さんは予告なく異動する可能性があります。掲載しているライブ写真は、2019年以前に撮影されたものです。

TEXT:伊藤奈緒子
PHOTO:伊藤奈緒子
裸体 PHOTO:umihayato

せっかくですので、長見さんが所属するバンド「裸体」に「本を売るならブックオフ♪」を演奏&歌っていただきました。ぜひご覧ください!!

【まだまだいる!ブックオフのすごい社員たち】

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