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「本を売るならブックオフ」

今でこそ、さまざまな方法で本を売ることができるようになりましたが、筆者の高校時代などはブックオフ一択でした。毎月のお小遣いで買っていたマンガが部屋から溢れるたび、紙袋一杯に詰めて、家族で近所のブックオフまで運んだのを覚えています。

今回は、そんな思い入れあるブックオフの失敗史を探るべく、二人のベテラン社員を直撃しました。

小金井真吾さん(写真左)

ブックオフグループホールディングス株式会社社長付執行役員 事業開発担当。趣味は、ウォーキングと地図を眺めること。

保坂良輔さん(写真右)

ブックオフコーポレーション株式会社執行役員 兼 仙台支社長。趣味は、千葉ロッテマリーンズの応援と古地図散歩。

会社の価値観と事業の結びつきを強くした「ゲームセンター」

早川:今回は「失敗の歴史」というなかなか話しづらい企画ですが、どうぞよろしくお願いします。

小金井:いえいえ、なんでも話しますよ!

保坂:黒歴史はありません!

早川:ありがとうございます。

まず、ブックオフはリユースのイメージが強いのですが、ほかにどんな事業をやられていたんですか。

小金井:飲食業やゲームショップ、託児所なんかもやっていましたね。でも、ほとんどが陽の目を浴びなかった事業なので、社員でも知らないものばかりだと思います。

小金井さんはアルバイトから入社したベテラン。失敗史にも詳しい

早川:なぜ、こんなにもいろいろな業態のお店を出していたんですか?

保坂:ブックオフ事業が成長して、店舗面積が20坪、60坪、150坪とどんどん大きくなっていくうちに、ブックオフだけでは物件を埋められなくなったんです。

早川:あー! それでブックオフ以外のお店を物件内に入れようとしたんですね。

保坂:200坪の良い物件があったとして、ブックオフだけでは150坪しか埋められないけど、50坪を別のお店で埋められれば出店できますからね。

さまざまな業態にチャレンジし始めたのはそういう経緯です。

早川:保坂さん自身も、そのような出店の経験はありますか?

保坂:僕のときは、群馬の館林に1、2階合わせて200坪くらいの広い物件があったんですね。

でも、どうしても2階部分が余ってしまうことが分かり、せっかくなら何か新しいことをしてみようと……。

早川:何をしたんですか?

保坂:ゲームセンターを作りました。

かつてゲームセンターを作った保坂さんだがゲームはあまりやらない

早川:自由すぎる。

保坂:「B2」っていう名前だったんですよ、懐かしいなぁ。

1996年の当時はプリクラブーム真っ只中で。偶然、そこには群馬県に数台しかなかったプリクラ機が2台あったんです。だから連日すごい行列でした。

早川:時代の流れにうまく乗ったんですね。

ブックオフのゲーセン、その名も「B2」の店内。普通のゲーセンだ

保坂:そうなんです。ただ、それが失敗で……。

早川:え? どこが失敗なんですか? 大成功じゃないですか。

保坂:会社の価値観にそぐわない事業だったんです。

早川:どういうことですか?

保坂:社内では「汗をかいて働く」というのが、大切な価値観だったんです。

ほら、古本って単価が低いじゃないですか。それで利益を出すためには、みんなで汗をかきながら団体戦で戦うしかなかった。一方でゲームセンターはと言うと濡れ手に粟状態で、ゲーム機の画面を拭いているだけで勝手に稼げたんです(笑)。

ゲーセン時代の話をすると、どこか苦い顔になる保坂さん

早川:でも、儲かってたんですよね? 事業としては成功じゃないですか?

保坂:うーん、結局プリクラブームは一瞬だったんですよ。3ヶ月くらいかな。

それで、売上は一気に落ちてしまった。社内からは冷ややかな視線を浴びていたし、そのまま徐々に縮小していきました。

早川:ああ。汗かいて作った売上じゃなかったから、ブームが過ぎたらあっという間に廃れちゃったんですね……。その失敗から学んだことってありますか?

保坂:汗かかないとダメだなって思いました(笑)。

それはまあ少し冗談ですけど、このゲームセンターの失敗のおかげで、ブックオフとして大切にしたい価値観というものが浮き彫りになりました。

当時は特に「これから会社をもっと大きくしていくぞ」とみんなが一丸となって戦っているときでした。売上を求めるよりも、ブックオフとして大事にしたい想いや価値観を体現する事業が必要だったなと、今では思います。

早川:なるほどなぁ。きっと、大きな失敗をしたからこそ、正解への道筋が見えてきたんですね。ちなみになんですけど、「B2」という名前の由来はなんだったんですか?

保坂:「B」OOKOFFの「2」階です。

早川:想像以上に浅かった。

命名の理由が浅かったので、表情が無になった筆者

想いだけが先行して失敗した「飲食業」

早川:ほかに失敗ってあります?

小金井:正面からきますね。

早川:そういう記事なので。

小金井:そうですねえ。飲食業ですかね。

早川:ブックオフと飲食、全然結びつかない。何をやってたんですか?

小金井:印象的なのは焼肉屋ですね。「強者どもが集まる場所」を意味する「多士済々」というお店でした。

早川:名前が強い。

保坂:「社員が集う場所を作って、美味しいものを食べさせてあげたい」という創業社長の坂本孝さんの想いからスタートしたんです。だからお店も会社の近くで。

早川:良い社長じゃないですか。何が失敗なんですか。

小金井:みんな太りました(笑)。

「めっちゃ太ってた」と懐かしむ保坂さんだが、今はとてもスリム

早川:それは別に良いじゃないですか(笑)。

小金井:夜にお店を閉めてから、みんなで焼肉食べて、また次の日朝9時から出勤するって生活を繰り返せば、そりゃ太りますよね。保坂さんも太ってました。

早川:どれくらい太ってたんですか?

保坂:ぞっとするくらい毎日お肉を食べてましたからね、今より20キロは太ってました。

20キロは太っていたという22年前の保坂さん。上下ともにデニムを着用

早川:焼肉屋はそのあと、どうなったんですか?

小金井:もともと売上が良かったわけではないんですけど、狂牛病が流行ったときに売上が一気に下がってしまって、閉店しましたね。

早川:なるほど……。飲食業は他にもやってたんですか?

小金井:代表的なのだと、こんな感じでしょうか。

BOOKOFFが手掛けた飲食業たち

  • カフェ
  • たこ焼き屋
  • 焼肉屋
  • 居酒屋

早川:たこ焼き屋もやってたんですね。

小金井:あー、それもちょっと失敗でしたね。僕の同期が店長だったんですけど。

小金井:味が正直……(笑)。

早川:ド直球じゃないですか。

同期の作ったたこ焼きの味は……表情から察していただきたい

小金井:あるたこ焼きチェーンに加盟して、研修を受けてからオープンしたんですけど、経験が足りませんでしたね。具材提供も受けていたので、本当にテクニックの問題で。

保坂:もとはブックオフの店長ですからね。素人が一週間研修を受けたくらいでは、難しかった。当時の会社の雰囲気として、かなりイケイケだったので、正直準備が足りなかったと思います。

早川:挑戦する姿勢はすごいんですけどね。

「過去に挑戦した事業リスト」を見て、バラエティ豊富なラインナップに思わず笑う

保坂:それこそカフェに至っては3回も挑戦して3回失敗してるんです。

今となってはですが、どうして「絶対に成功する!」と安直に思えていたんだろう……。

小金井:とにかく真っ直ぐだったんですよね。創業社長の坂本孝さん含めてみんな「やってみようよ!」という気持ちが先行して動いていた。みんなで力を合わせればできるって、すごく熱狂的な空気感があったのかもしれない。

早川:事業計画書とかって、どうなってたんですか?

保坂:え?

「事業計画書」という言葉を初めて聞いたような顔をする保坂さん

小金井:そういえば、なかったね。事業計画書を作る文化がなかった。

早川:それが失敗の原因……それなのでは……。

保坂:言われてみて初めて気づきました(笑)。

早川:なんで作らなかったんですか?

保坂:スピードが落ちるからですね。

坂本さんは「こんなの誰でもできる」「こんな事業、大企業が気付いたらすぐ真似される」とよく言っていて、とにかくスピードに対する危機感が強かった。

“走りながら考える”がキャッチフレーズでしたからね。

小金井:でも、そのスピード感で事業を展開できたからこそ、今のブックオフがあるのは間違いない。上場前だからできたんだろうけど、失敗の責任は社長が取るという形でした。

当時はとにかくスピード感が重視されていた

早川:男気だなあ。その“走りながら考える”から得られたことって何ですか?

小金井:たくさん失敗できたことだと思います。

早川:失敗できたことが、財産?

小金井:たくさん失敗できたってことは、たくさん打席に立ったということ。企業も安定期に入っちゃうと、わざわざ打席に立たなくなるじゃないですか。

早川:リスクを冒さなくても、効率よく事業を回す方法が分かっているから。

小金井:そう。ブックオフも上場後は安定期になったかもしれないけど、創業期にたくさん失敗して、打席に立った経験を持つ人間がたくさんいる。

その経験は、これから後世に繋いでいくべきものだと思いますね。

小金井さん自身も数多くの打席に立ってきている

コンプラの重要性を痛感したしくじり

早川:小金井さんと保坂さんの、個人的な失敗談とかってありますか?

保坂:僕、一度だけ辞表を出したことあるんですよ。

早川:何をやらかしたんですか?

保坂:僕が担当していた事業で、大量出店をしたんです。ただ、無知だったんですね。出店するために必要な手順がきちんとわかっていなくて……。

早川:それは……まずいですね。

保坂:でも、坂本さんには辞表を受け取ってもらえませんでした。

「災いを転じて福としないでどうするんだ」ってめちゃくちゃ怒られて。

保坂さんのしくじりは詳細を書けないほどのレベル

早川:熱いですね。その失敗から学んだことは?

保坂:手続きとコンプライアンスの重要性ですね。

早川:身をもって痛感したんですね。

失敗から得た教訓で、次の成功をつかみとってきました

小金井:それがきっかけでコンプライアンスの部署もできたんですよ。

早川:ちゃんと失敗を活かしてる!

小金井:ちなみに、僕は新人時代に先輩が××××××されまして……。

早川:その話はガチでヤバいのでやめておきましょうか。

新たなチャレンジを応援し、失敗を許容するブックオフの文化

小金井:数々の失敗について今回話してみて、改めて「失敗が財産」だなと思いました。

早川:そもそも、なぜそこまで多岐にわたる事業展開をしていたんですか?

保坂:当時は、FCタウン構想というものがありました。

早川:FCタウン構想?

保坂:簡単に言うと、ブックオフだけで一つのモールを作るというか、総合エンタメのお店を作りたかった。そのためにさまざまな業界にFC(フランチャイズ)加盟してきたという背景ですね。

早川:そんな構想があったんですね。

壮大すぎた「FCタウン構想」ですが、しっかり今に活きています

保坂:今はもうタウン構想はありませんが、ブックオフ内で扱う商材を増やすという形で、当時の想いは残っています。

早川:確かに、寺田心くんが出演するCMも「ブックオフは本だけじゃない」ということを打ち出していますね。

保坂:新刊市場は全体的には右肩上がりではないので、ここからの10年、20年を考えたときに、商材を増やしていかないと生き残っていくのが難しいですから。

早川:そうなると、お二人はこれからのブックオフに必要なことは何だと思いますか?

保坂:創業当時のような、チャレンジ精神だと思います。ただ、ブックオフにとっての良さは失くしてはいけない。

小金井:たくさん挑戦して、たくさん失敗したことで積み重ねてきたものが、ブックオフにはたくさんあるはず。

そこは大事にしながらも従来のブックオフを壊していくような挑戦もこれからはしていきたいですね。

早川:今日はありがとうございました!

赤裸々(すぎる)トークが聞けました、ありがとうございました!

今回話を聞いて、失敗を肯定的に捉えることの大切さを知りました。ブックオフでは、社員のチャレンジを奨励し、失敗しても社員を責めない姿勢が反映されている気がします。これから、僕たちをあっと驚かせるような挑戦を期待しています。

TEXT:早川大輝
PHOTO:宇佐美亮

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