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鈴木けんぞうの写真

鈴木けんぞう

YouTuber、ゲーム実況者、ポケモンコレクター

1996年、沖縄県生まれ。ポケモン実況系YouTuber。「最初の草むらでレベル100にする」や「色違い全国図鑑を作る」、「中古データだけでポケモン全国大図鑑は完成するのか」など、自身に強烈な縛りを課し、時に視聴者を巻き込みながら膨大な時間をかけて1本の動画を作るスタイルが人気を博しているが、大変すぎるので本人は悩みの種ともしている。YouTubeチャンネル:鈴木けんぞう

1本の動画に5年をかけることも。ストイックでヘビーな鈴木けんぞうの動画づくり

──はじめまして。本日はよろしくお願いいたします。

はい! 狭いところで申し訳ないですが、よろしくお願いいたします。

インタビュアーに向かって笑顔で話す鈴木けんぞう
本日は東海地方のとある場所、鈴木けんぞうさんのご自宅でインタビューをしていきます

──背後にあるゲームキューブたちが気になりますが……まずはざっくりプロフィールから。現在は、なんという肩書で活動されているんですか?

自分では、珍しいポケモンを集める「ポケモンコレクター」を名乗ってます。ポケモンバトルを見せる人やポケモンカード(以下ポケカ)を集める人など、ポケモン専門の動画投稿者がYouTube上にはたくさんいて。なかでも僕は、珍しいポケモンや昔のアイテムの収集に特化した動画を作っています。

──珍しいポケモンやアイテムというと……?

分かりやすいのは、1/4096の確率で出現する「色違い」ポケモンですね。以前、色違いポケモンだけで図鑑を完成させるっていう動画を作りました。

──1/4096を、何種類で……?

当時3DSのソフト内でやったので、801種類かな……。だから理論上の試行回数は、だいたい3,280,000回になりますね。これを5年かけて作りました。

──ヒッ。

色違い以外だと、特定イベントでの配布アイテムとか。例えば2004年にデオキシスの映画(※1)があったんですが、その前売り券を買うと「オーロラチケット」っていうアイテムがゲーム内で貰えたんです。で、このチケットを使ってとある船に乗ると、デオキシスがいる島に着く。大体の人は、そのままデオキシスを捕まえちゃいます。そうすると、チケットはもう使えなくなる。

ただ、ですよ。もし、中古で買ったソフトに、たまたま“未使用”のオーロラチケットがあったら……。

※1「デオキシスの映画」
劇場版ポケットモンスター アドバンスジェネレーション 裂空の訪問者 デオキシス

西日に照らされた鈴木けんぞう

デオキシスの色違いが厳選(※2)できるんです。

※2「厳選」
ポケモンには性別や色違い、個体値、性格、めざめるパワーのタイプなど、入手時点に決定する要素がいくつかある。これらの要素を、自分が求めるものが手に入るまで入手を繰り返す行為を厳選という

──ヒーー!

だから未使用のオーロラチケットが入っているソフトは、価値が高い。実際フリマアプリではそれが高値で取引されていることもあります。ただ、そういうソフトって大体改造データだったりするんですよね。

──それはよくないですね。倫理的に……。

はい。っていうか、普通に面白くないです。だからこそ、ブックオフみたいな場所でたまたま買ったソフトに未使用のオーロラチケットがある、そういう偶然性に価値があるんです。

──天然モノ、というか。

そういうのを面白がってたら、自然と負荷の高い、縛りがきつい動画ばっかりになってました。本当、しんどいです。本当は週1とかで更新したいのに。YouTubeって投稿頻度が大事なんですよね? なかなか投稿できないからもう、生放送とかでお茶を濁すしかない……。

──鈴木さん自身、それを楽しんでる感じもしますけどね。

まあ、そうですね。でも、ただ僕が縛られているところを見せ続けても面白くないので、やっていきながらゲームキューブを16台、Switchを9台同時接続してみたり、3DSを10台同時に操作できる装置を作ったり、勝手に草むらをグルグルしてくれるマシンをDIYしたりしていますね。楽になるし、楽しいので。

同時接続されたゲームキューブ16台
鈴木「色ごとに並んでるですよ、かわいいですよね。どれかが壊れた時用に、ストックがもう4台あります」
同時接続されたSwitch9台
鈴木「これらはもちろん、一画面で管理できるように配線組んでます」

──急に狂気が現実味を帯びてきました。

分かります。

3DS10台同時操作装置を触る鈴木けんぞう

これは3DS10台を同時に操作するために作った装置です。レバーがモンスターボールになっててかわいいでしょ。

草むらをグルグルするためのマシン

これは自動で草むらをグルグルするためのマシンです。配線とかは独学で。これで楽になりましたね。

──なんというか、すごいです。本当に……。

鈴木さんのクレイジーな自宅の全貌はこちらから。コワいです

少年・鈴木けんぞう。お金持ちの友達には時間で対抗することを覚える

──ゲームは昔からお好きだったんですか?

そうですね。それこそ中古ソフトでずっと遊んでました。

──ブックオフには……?

もちろん行ってました! 地元が沖縄の宜野湾(ぎのわん)市なんですけど、そこのブックオフには、小学生の頃から通ってました。家がそんなに裕福じゃなかったんで、みんながDSで遊んでる時にもずっとブックオフで買ったゲームボーイアドバンスのソフトで遊んでました。

ブックオフ 宜野湾店
鈴木さんが東海地方に越してこられるまで、ずっと通い続けていたBOOKOFF 宜野湾店。当時は青×黄色×赤のブッコロールカラーだったとか

──当時からポケモンはお好きだったんですか?

そうですね。当時みんなが遊んでたのはDSの「ポケットモンスター ダイヤモンド・パール」とかだったんですけど、僕んちでは買えないからお小遣いで200円の中古「ポケットモンスター ルビー・サファイア」を買って遊んでました。

──当時はどういう遊び方を?

ストーリーを全てクリアしたらデータを友達のソフトに移して、自分のソフトでまた一から始めるっていうのを繰り返してましたね。ポケモンは、全クリするたびに”伝説のポケモン”が1体手に入るんで、何周もしている僕は本来みんなが1体しか持っていない伝説ポケモンを何体も持っているんですよ。DSでプレイしている裕福な友達がちょっと珍しいポケモンを持っていたら、溜め込んだ伝説ポケモンをネタに交渉して、交換する。時間をかけることが勝ち筋でした。

インタビュアーに語る鈴木けんぞう

──すごい。今に繋がるものを感じます。他に、ブックオフに関する子供の頃の思い出はありますか?

『SLAM DUNK』(集英社)を全巻立ち読みして、それがきっかけでバスケ部に入ったのを覚えてます。当時小学生だったんで、漫画も気軽に買えなくて。だから全部立ち読みしたんだけど、これがメチャクチャ面白くて。

──ド名作ですからねえ。

ただ、バスケ部なのに全巻立ち読みってだいぶダサいじゃないですか。だから入部の理由を聞かれるたびに「アニメで『SLAM DUNK』見て……」とか誤魔化してたんですけど、さすがに後々全巻買いました。ブックオフで。

──そこは筋を通そうとしたわけですね。律儀だなあ。

ブックオフで『バガボンド』全巻を立ち読みしたツワモノはここにもいます

5年かけて未だ完成をみない「中古データで図鑑完成」シリーズ

──今でも、動画の企画とかでブックオフを活用することがあるんですよね。

めっちゃお世話になってます。そもそも、動画投稿を始める時にゲームキューブ用のゲームボーイプレーヤーを買ったんですけど、それもブックオフで探しましたから。ブックオフって古いハードの周辺機器とかが安いし、充実してますよね。メモリーカードとか。

ゲームキューブ用のゲームボーイプレーヤー
鈴木けんぞうさんが動画投稿を始める時に買ったゲームキューブプレーヤー、ブックオフ出身ですって!

最近はそういう周辺機器をつい見ちゃいますね。あと、今「中古ソフトの中にあるセーブデータを使ってポケモン図鑑を埋める」っていうシリーズをずっとやってるんですけど、この企画でもブックオフにはお世話になりっぱなしです。

──中古ソフトの中に消されず残っている他人のセーブデータからポケモンを拾ってきて、それで図鑑を埋めるわけですか。

そうです。3DSまでのタイトルを合計すると800くらいポケモンの種類があるんですけど、これを自分で捕まえたりせずに全部中古ソフトから引っ張ってくる。これも5年くらいずっとやってて、今やっと、残りが5〜6匹のところまできました。

(定期)思いついても普通はしない

──また手間のかかることを……。

合計で何本買ったのか、もう全然わかんないです。

──そうは言っても、予算的な上限はありますよね?

一応、1動画につき1万円以内に収まるように気をつけてはいます。結局毎回越えちゃうんですけど。今そのポケモン図鑑を埋める動画だけで30数本動画があるんですけど、多分合計で50万円以上にはなってるんじゃないかな……。

──ソフト数でいうと……?

500本くらいですかね。体感、1/3くらいがブックオフで買ったものなので、少なめに見積もって160本はブックオフでポケモンのソフトを買っています。

──根こそぎだ。

500本ものポケモンのソフトたち
根こそぎだ

まさに。一時期沖縄のとあるブックオフにやたらと『ポケットモンスター サン』が揃ってた時があって。それを一人で全部買い占めていたら、人気のあるソフトだと思われたのか、次行った時にちょっと値段が上がってたことがありましたね。780円だったのが980円になってて。そのお店の相場を崩してしまった気がして、少し反省しました。

──お店の人は驚いたでしょうね。「この地域、やたらポケットモンスター サンがはけるぞ! 人気なんだな!」って思っていたら……

僕一人ですからね。

──乱獲者だ。

中古ソフトには他人の物語があるし、地域差もあるから面白い

──中古ゲームの買い方のコツってあるんでしょうか?

あります。ゲームボーイアドバンスのソフトって、外装が透けてるじゃないですか。あれのおかげで、ソフトの電池が交換されているかどうかがわかるんです。で、電池が交換されているソフトは、僕からすればあんまりいいセーブデータがない場合が多いですね。

──どうしてですか?

「分かってるやつ」がプレイしてる可能性が高いからです。電池を入れ替えるくらい知識がある人って、売る時に中のセーブデータもちゃんと移してから売ってることが多くて。あ、もちろん普通にプレイするならそれでもいいんですけど、僕は中のセーブデータが目的だったりするんで……。子供が飽きたからそのまま売っちゃった、みたいなものの方がいいデータが残ってることが多いんです。

──は~なるほど~。

レトロゲームのコレクターとかとは違う判断基準ですけど、僕の場合はラベルが剥がれてビリビリになってたりするやつのほうが、子供が遊んだセーブデータがそのままになってる可能性が高いから、ありがたかったりするんです。年末年始とか引っ越しシーズンとかは、子供が飽きたゲームをお父さんお母さんが売りに出したりするタイミングなんで、狙い目です。

プラモデル作成ブース
配信部屋の一角にはプラモデルの制作スペースも。鈴木さんはプラモデルも作ります

──特定のソフトを買い占め続けていると、色々見えてくるものもありそうですね。

地元に住んでた時は、中古で買ったソフト内のポケモンに友達の名前がついていたりして、ブックオフも店舗によって地域差がちゃんとあるのが面白かったですね。

──ブックオフでは、基本的に買い取ったものは同じお店でそのまま販売することが多いんです。

なるほど、やっぱりそうなんですね。実は沖縄から東海に引っ越してきたのには、「もう沖縄の傾向で足りなくなった、飽きちゃった」っていうのもあって。

ポケモンって、たとえば名古屋限定で開催されたイベント・配布アイテムとかがあるんですよ。沖縄だとそういうセーブデータが残っているソフトが流れてこないんで、わざわざ都会のブックオフに行ってみるっていうのも一時期やってたくらい。貴重な配布データを探しにブックオフを回るのも、やってみると楽しいです。

笑顔で話す鈴木けんぞう

──ブックオフ、全国各地にありますからね。北は網走、南は那覇まで。

だから地域差はマジでありますよね。沖縄だと米軍基地が近いんで、一時期ブックオフに英語版のルビー・サファイアが売ってたことがあったんですよ。あれはめちゃくちゃ貴重なんですけど、当時は普通に日本語版と同じ値段で売ってました。今ではありえないですけど、そういうこともたまにあったんです。

──へえ〜! それは沖縄ならではですねえ。ロマンがある。

都会にはレアなセーブデータが残ってるソフトが多いかもしれないけど、ライバルもその分多い。田舎だと、似たようなソフトが安くいっぱい売れ残っていたりする。

──全国に店舗があるからこその面白さですね。ポケモンソフト以外でもそういう傾向をまとめたら面白そう。

ブックオフには「当時」がそのまま残っている

──ベタな質問ではありますが、そんなけんぞうさんにとって、ブックオフとはどういう存在なんでしょうか?

幼少の頃からずっと身近にあるんで、どういう存在か考えたこともなかったというか……。なんかもう、実家よりブックオフにいる時間の方が長いくらいなんですよね。だからもう自分の一部というか。

──分かります。

インタビュアーに向かって話す鈴木けんぞう

ゲームだけじゃなくて、昔出た攻略本とかが安く売ってることもありますよね。昔の雑誌とか、そういうのもよく見にいきます。子供の頃から通っているっていうのもあって、懐古的な楽しみ方かもしれないですけど、ブックオフにはずっと「当時」があるなって思ってます。

──作られた懐かしさじゃない、生のままの「当時」というか。

変わっていないものもあるっていうことに浸れる感じというか。

懐かしがってもいいし、もちろん最近のゲームや本を買ってもいい。時間的な幅に地域差も組み合わさるから、本当に色々な楽しみ方ができるっていうのが、ブックオフの面白いところだと思います。

TEXT:しげる
PHOTO:ブックオフをたちよみ! 編集部

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