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ブックオフグループホールディングス株式会社執行役員の井上徹さん

井上徹さん
ブックオフグループホールディングス株式会社 執行役員

2000年4月に入社。BOOKOFF町田中央通り店(当時)やCDOFF多摩永山店など数店に勤務。その後、物流子会社を経てブックオフコーポレーション(株)営業企画室長、業務部長(当時)・経営企画部長を経て、R室およびマレーシアのリユース店「Jalan Jalan Japan」を運営する現地法人BOK MARKETING SDN.BHD.を立ち上げる。現在はブックオフコーポレーション(株)で執行役員兼R室室長を兼任。ガンダム(ファースト派)好き。

「どんなものでも引き取り価値をつくる」の想いで始まったCDプラ事業

――はじめに、2022年にスタートした「CDプラ事業」について教えてください。

井上:ブックオフの店舗で廃棄されるCDやDVDから、オリジナルの再生プラスチック資材「CDプラ」を作り、販売する事業です。

ブックオフでは、年間2,460万枚ものCDやDVDをお客様から買い取っています。その一方で、どうしても販売しきれないCDが発生してしまいます。その量はなんと年間1,700トン。2018年までは業者に引き渡した後、中国に輸出され、リサイクルされていたようですが、2020年頃からできなくなってしまいました。

――何があったんですか?

井上:廃棄物(ごみ)の輸出入に規制がかけられたのです。中国は1980年代から世界各国の廃棄物を盛んに受け入れはじめ、とくにプラスチックごみは「全世界の半分」といわれるほど膨大な量を輸入していました。

しかし、自国の自然環境が悪化してきたため、2017年から段階的に廃棄物の輸入規制を実施し、2021年には完全にごみの受け入れを停止しました。

同時期に、廃棄物処理に関する国際的な取り決めである「バーゼル条約(※1)」も改正され、プラスチックごみの輸出が事実上できなくなりました。つまりプラスチックごみは、各国が責任を持って自国で処理しなければいけなくなったのです。

井上徹さん

――なるほど。そのタイミングで、CDやDVDの買取量を減らすなどのご検討は?

井上:いえ、「お客様の大切な商品は何でも受け入れる」というのがブックオフの伝統的ポリシーであり強みですので「CD・DVDの買取を控える」という選択はしたくなかったですね。

そこで国内のリサイクル業者を探してみたものの、再生プラスチック資材は「安かろう悪かろう」という評価が根強く、資材としての価値が低くてコストが見合わないわけです。実際、地方の店舗では業者に回収を拒否され、廃棄するしかない事態が起こりはじめました。それなら「自分たちでCD・DVDを原料にした資材を作り、それを販売した利益で回収コストを補おう」と始めたのが「CDプラ事業」です。

※1「バーゼル条約」
正式名称は「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」。

井上徹さん

――それがプロジェクトの始まりですね!

井上:実はですね……最初は「資材」ではなく「商品」を作ろうと思っていたんです。いろいろ考えた結論が、なぜか「ごみ箱」。ホームセンターに足を運んだり、良いデザインのごみ箱を見つけたらそのメーカーに飛び込み営業したりしたものの、周りからは「え、ごみ箱……?」と失笑され(笑)。ものづくりはブックオフとしても初めての挑戦ですしイメージが湧かなかったのかな? でも、まあ「ごみ箱」ですからね(笑)。

でもCDやDVDを有効活用するためには、自分たちで何か「モノ」を作って利益を出すしかない。それから、プラスチック製品メーカーの方や廃棄物処理事業者の方、SDGsの専門家など、とにかくいろんな人に会うたびに自分の考えをぶつけました。そんな中で出会ったのが株式会社ナカダイホールディングスの中台澄之社長です

デスクトレーが教えてくれた再生プラの価値

――「ナカダイ」とはどんな会社なんですか?

井上:群馬県前橋市に本社を置く、産業廃棄物処理業を中心に行なっている会社です。「捨て方をデザインし、使い方を創造する会社」というビジョンのもと「99%のリユース・リサイクル率を誇る産業廃棄物の処理業者」として、たびたびメディアにも登場しています。

社長にお会いする機会をいただいて、私が「ブックオフならではのストーリー性を持った、付加価値の高いリサイクル製品を作りたいんです」と胸の内を語ったところ、「いい考えですね! とても面白い」と共感してくれて。

「ちょうど今、多摩美術大学と一緒に廃棄物から商品を企画する『すてるデザイン』という産学連携プロジェクトを始めようとしているので、良かったら参加してみませんか?」とお声がけいただき、一も二もなく承諾しました。

――「すてるデザイン」。ユニークなネーミングですね。どんなプロジェクトですか?

井上:学生と一緒に廃棄物から商品を企画する共創プロジェクトです。参加企業は我々のほか、(株)ナカダイホールディングスのグループ会社である株式会社モノファクトリー、業務用資材などを主に扱う伊藤忠リーテイルリンク株式会社、総合事務用メーカーのプラス株式会社の5社。プロジェクト立ち上げから2年経ちますが、パートナーがどんどん増えています。

各社が廃棄資材や中古資材を提供し、それらを魅力的なアイテムに生まれ変わらせるアイデアを学生の皆さんに提案してもらいました。

すてるデザインの展示会の様子
2021年6月に行われた、すてるデザインの展示会の様子

当然、私たちが提供したのは「CD・DVD」です。学生の皆さんは本当に勉強熱心で、リサイクルの歴史から勉強を始めるチームや、いきなりCDをバラバラに分解するチームもありました。

最終発表会にはブッククリップやホイッスルなど、5つの商品企画が並び、そのなかで最も実現可能性が高く、売れそうだと感じたデスクトレーを商品化することにしたんです。

デスクトレーのサンプル
学生の提案をもとに試作したデスクトレー。メガネやペンなど、机周りの小物を置くのに便利。

――商品化をするにあたって、苦労した点は?

井上:ひとつは強度の問題です。デスクトレーにはCDのディスクに使用される「ポリカーボネート(※2)」を使用したのですが、再生材のポリカーボネート材は、バージン材(※3)よりどうしても強度が落ちて割れてしまいます。そのため、バージン材を50%加えて強度を補うことにしました。

あとはカラーバリエーションですね。大学の先生からは「もうちょっと考えたら?」と言われたのですが(笑)、ここだけは自分の好みを押し通させてもらって、シルバーのトレーはガンダム、同じくメタリックレッドはシャア専用ザク、メタリックイエローは百式、メタリックブルーはグフのイメージで、アニメ『機動戦士ガンダム』の好きなモビルスーツの色で統一させてもらいました。商品説明をする際には話のネタになりますね! メタリックで、同世代からはカッコいいと評判です(笑)。

※2「ポリカーボネート」
熱可塑性樹脂の一種。耐衝撃性と透明性をもったエンジニアリングプラスチック。

※3「バージン材
新品の資材のこと。

「すてるデザイン」で製作したデスクトレー
「すてるデザイン」で製作したデスクトレー。現在、こちらのトレーはBOOKOFF 吉祥寺駅北口店などで購入できる(税込330円/個)。

――「すてるデザイン」に参加されて、大成功でしたね。

井上:そうですね。ただ一番の収穫は、CD・DVD由来の再生プラ資材の本質的な価値に気づけたことです。

というのも「すてるデザイン」の展示会で再プラのペレット(※4)を大学の先生や参加企業の方々に見てもらったら、「これは売れるよ!」と絶賛されたんですね。
最初、私はその話を聞いても「?」でした。よくよく話を聞くと「CO2削減が企業の至上命題となっている今、多くのメーカーがバージン材の使用量を減らすために再生プラを欲している」しかも「品質はもちろん、出所がきちんと保証されてる再生プラをこぞって求めている」と!

※4「ペレット」
プラスチック成形に使用される粒状のプラスチック。プラスチック製品の原料として、幅広く使用される。

井上徹さん

さらに、大学の先生から「ブックオフは、自治体で回収がしきれないCDを日本で一番頑張って回収している企業と言えますよね」と言っていただいたのがうれしくて。

実は、1,700トンの廃棄CD・DVDを自社で企画した商品だけで消費できるわけがないとも思っていたので「そうか、商品化しなくても資材(ペレット)の状態でメーカーに売る。それなら量も捌けて、利益も出せる。よし、ブックオフブランド発の再生資材を作ろう!」と決意したわけです。

――「CDプラ事業」が大きく前進し出した瞬間ですね。

井上:はい。でも、そこからが大変でした……。

再生プラ製造に立ちはだかる「品質とコスト」の問題

――どう大変だったんですか?

井上:一番は、業者さんの選定です。再生プラの製造は、大きく①各店舗から回収する、②素材別に分別・破砕する、③異物を除去する、④溶かしてペレット化する、という4つの工程に分かれます。しかし、この4工程を一気通貫で請け負っている業者は日本にはなく、会社ごとの分業制になっている。

つまり、廃プラを輸送してバトンリレーのように各業者をつなげなければ、リサイクルができないのです。技術力と地理的な関係を考慮しながら、最適な業者さんを選ぶのに苦労しました。とくに③の異物の除去については、CD・DVDならではの難しさがありました。

CD プラ
CD・DVD から再生したプラスチック資材「CD プラ」

――というと?

井上:実は、一般的なCDやDVDの反射層はアルミでできています。これらを綺麗に取り除かなければ、透明なペレットはできません。ちなみに中国では、リサイクルするときに剥離剤という薬品でアルミを除去していたそうですが、それは環境によろしくない。

ということで、薬品を使わない安全な除去方法は何かないかと思案し、まずはブックオフにあるディスク研磨機で削ることを思いつきました。除去は大成功だったのですが、計算したら1枚当たり30円と、コストがかかり過ぎていて……。ディスク1枚の重量は15グラム(笑)。1キロあたり数百円で売ろうとしているペレットに、そんなお金はかけられませんよね。

粉砕したCDプラスチック
粉砕したCDプラスチック

――ブックオフならではの方法を試したのですね。良い除去方法は見つかったのでしょうか?

井上:その後、外部の業者さんを探したところ、長野の山奥に豊富な水資源を利用した独自の洗浄技術で、異物を除去できる会社があることがわかりました。その会社を訪ねたところ、破砕したディスクをタンク内で高圧洗浄して、短時間で大量にアルミが取り除かれる様子を見せてくれました。

――すごい技術ですね。

井上:ええ、しかも薬品は使用しないので環境にもやさしい。洗浄に使った水は、きちんとろ過して排水しているのですが、その排水槽では金魚が飼育されていました。ろ過により出た異物も固形燃料に加工されるなど、とことんごみにしないシステムでした。

しかも良心的な価格設定で、長野まで輸送しても十分に採算が立つと判断し、すぐにお願いすることにしました。今振り返ると、この会社との出会いも大きなターニングポイントだったと思います。

――多くの出会いによって少しずつ事業がカタチになってきたんですね。

井上:本当にその通りですね。事業化に漕ぎつけることができたのは、多くの人の支えがあったからです。2022年12月には幕張メッセで開催された「第2回サステナブル マテリアル展」にブースを出展し、一般の方々にも「CDプラ」をお披露目できました。

会場には素材・材料のトップメーカーが勢ぞろいしていましたが、その真ん中に構えたブックオフの看板がいちばん目立ってました。来場者の方々も「ブックオフがなぜここに?」と興味を持ってくれて、3日間の開催期間中、ずっとブースに人の輪ができていました。

第2回サステナブル マテリアル展 出店の様子
第2回サステナブル マテリアル展 出店の様子

ブースにはデスクトレーのほか「CDプラ」のペレットも展示していましたが、某メーカーの方に「これは参った!」と言われました。パッケージの袋に「BOOKOFF」と大きくプリントしていたからです。

なぜかは知りませんが、一般に再生プラ資材は無地の袋に詰められて流通するようです。「CDプラ」は商品名とブランドを明確に打ち出したことで「信頼感」や「共感」といったあらたな価値を生み出すことができました。

展示会で交換した名刺は860枚。プラ製品メーカーや素材メーカーをはじめ、とても多くの企業から興味をいただいて、事業拡大の手ごたえを感じました。今各社と具体的な取引の話を進めているところです。

CDプラ資材のパッケージ写真
CDプラ資材のパッケージの袋

CDプラの未来 これからどんなことに挑戦していくのか?

――好調なスタートを切った「CDプラ事業」。今後の展望を教えてください。

井上:当面の目標は、この取り組みを全店舗に広めることです。実は現時点で廃棄CD・DVDを回収できているのは、 東名阪エリアの直営店舗のみ。地方の店舗や加盟店は回収コストがかさむため手をつけられていません。早く販売を軌道に乗せて、その利益で地方店舗や加盟店の回収コストを補填し、全国約800店舗の廃棄CD・DVDをすべてリサイクルしたいと思います。

また、現状ではペレットにごく少量の不純物が混じっているので、それを除去するための洗浄工程を新たに加えることを検討しています。製造プロセスも見直し続けて、品質向上にも努めていきます。

――では、ほかにチャレンジしたいリサイクル資源はありますか?

井上:直営店に限定すれば、すでにブックオフでは主力商品の本や家電は他社との協業を通じてリユース・リサイクル率100%を実現しています。

しかし、雑貨は50%、衣料は90%と少し数字が下がってしまう。国内で売れ残った雑貨や衣料は、マレーシアのリユース店舗「Jalan Jalan Japan」で販売するなど、極力リユースしていますが、それでも廃棄品が一定量出てきてしまうんですね。こうした雑貨、衣料の廃棄品もすべてリサイクルしたいと思います。

CDプラについて語る井上さん

具体的には、RPF(固形燃料)に加工することを検討中で、一部は他社との協業で実現しています。今後は、自社でRPFを製造し「CDプラ」のようにブランド化した再生資材として販売できればいいですね。さらに、それを当社が提携する製紙メーカーに使ってもらえば「ブックオフで売れ残った本を、ブックオフ由来のRPFを使って古紙にリサイクルする」という循環をつくることができます。3年以内には実現したいですね。

RPF(固形燃料)
ブックオフで販売しきれなかった雑貨から作られたRPF(固形燃料)。化石燃料と同等の熱量だが、同燃料より低価格でCO2排出量も少ない。

――それには何がカギになりますか?

井上:やはり、パートナー企業さんとの連携が重要になります。「CDプラ事業」も、難題に対して一緒に考えてくれるパートナーがいたからこそ、実現できました。本当に感謝しています。

これからの時代、廃材・廃棄物から付加価値をつけて新しい製品を生み出すには「デザイン力」がとても重要になっていくと思います。そうしたなかで、やはり当社だけでやれること、発想できることには限界があります。私たちと志を同じくしてくれる共創パートナーさんと協力してチャレンジしていきたいですね。

リサイクル以外にも、たとえば東急電鉄さんとは、保管期間が過ぎた鉄道・バス施設のお忘れ物をリユース・リサイクルする「『モノを捨てない』資源循環型まちづくり」、相模原市とは「空き家の無料相談会」など、パートナー企業・団体とさまざま取り組みを行なっています。サステナブルな社会の実現に向けて、ブックオフはこれからもどんどん新しいことに挑戦していくので、ともに何かやってみたいという企業の方は、ぜひお気軽にお声がけください。楽しく、豊かに暮らせる社会を一緒につくりましょう。

CDプラ事業専用ページ

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TEXT:相澤良晃
PHOTO:井川拓也・ブックオフをたちよみ! 編集部

【ブックオフのサステナブルな社会の実現に向けた取り組みはこちら】

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