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岩井さんのプロフィール写真

ハライチ・岩井勇気
1986年生まれ。埼玉県上尾市出身。2006年、幼馴染の澤部佑とお笑いコンビ・ハライチを結成。バラエティ番組やラジオ、CMなど幅広く活躍。近年では『小説新潮』(新潮社)での連載をまとめたエッセイ集がベストセラーに。月〜金お昼のバラエティ番組『ぽかぽか』(フジテレビ)のMCや、毎週水曜深夜『まんが未知』(テレビ朝日)などに出演中。

ハライチ岩井とブックオフの関係

――今日はよろしくお願いします。ここ、BOOKOFF 池袋サンシャイン60通り店に来られたことはありますか?

初めて来ました。けど……俺の知ってるブックオフじゃないですね

アニメグッズコーナーの棚
キーホルダーにバッジ、アクスタなどのアニメグッズが所狭しと並ぶ店内
フィギュア、プラモデルコーナーの棚
フィギュアやプラモデルもズラリ

――2022年11月にリニューアルして、アニメ関連グッズが増えたそうです。

なるほど。学生時代に通っていたブックオフのイメージとは全然違いますね。少し前にイベントで呼んでもらったPAPA上尾店には、カードバトルをする卓がいっぱいあって(トレカ/対戦スペース)すごく今っぽいなと思いました。場所によって、こんなに違うんですね。

棚を見上げる岩井さん

――学生時代はどちらのブックオフに行かれていたんですか?

埼玉県の伊奈町にあったブックオフによく行ってました。中1のときに、漫画『まじかる☆タルるートくん』(集英社)を買ったときのことをよく覚えています。

母親が厳しくて、テレビアニメはあんまり観せてもらえなかったんですよ。特に『まじかる☆タルるートくん』は、男性の願望が詰まっててちょっとエッチなんですよね。当時は連載もアニメも終わっていたし、新品の漫画を売ってるのは見たことがなかったんです。でもブックオフなら安く買えるから、自転車で何軒か回って全巻集めました。今も実家で大事にとってありますよ。

『東京大学物語』(小学館)も読みました。女の子を一番かわいく描ける漫画家は江川達也先生だと、今でも思ってます。

――ブックオフで本を売ったことはありますか?

近所に住んでいた3つ上のお兄ちゃんに『ドラゴンボール』(集英社)をもらったことがあって、大事にとっておいてたんですけど、新しいのを買い揃えようと、それを売って集め直しました。

――岩井さんはアニメもお好きだと思いますが、アニメのグッズも買われるんでしょうか?

グッズは全然買わないです。プレゼントでいただくこともあるので、それはとってありますけど、キャラクターよりもアニメーションが好きなんです。『ヒプマイ(ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-)』(ミュージック・ジャパンTVほか)だったら伊弉冉一二三(いざなみひふみ)が好きですし、『あんスタ(あんさんぶるスターズ!)』(TOKYO MXほか)も観てるから、好きなキャラクター自体はいるんですが、そのグッズを身につけたいとは思わないんですよね。もちろんそういう愛し方もあると思うし、どちらが正解というものではないと思っています。

――キャラクター推しではないということですが、好きになるのはどういうキャラクターですか?

フィギュアの箱を眺める岩井さん

『冴えない彼女の育てかた』(フジテレビ)の加藤恵はめっちゃ好きです。他のキャラクターは、黒髪ロングのできる先輩とか、ツインテールのツンデレとか、キャラがわかりやすいんですけど、ヒロインである加藤恵だけこれといったものがないんです。髪型を変えたり、途中でメガネをかけたり、帽子を被ったり、見た目も定まってなくて。リアクションも「へえ〜」「は〜」とかいわゆる「アニメ」っぽい特徴がない。ただ特徴がないからこそ現実にいそうな感じというか、リアルでいいんですよね。
でもフィギュアって、アニメには出てこない服を着てるのが謎なんですよ。水着とかバニーガールとかありますけど、アニメに出てきた服を着てよって思っちゃいます。

棚越しに微笑む岩井さん

周りにバレないようにラノベを読み、アニメの新しい見方を知った10代

――漫画を好きになったきっかけはなんだったんですか?

もともと父親が漫画好きで『週刊少年ジャンプ』(集英社)や『週刊少年マガジン』(講談社)、『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)など、ひと通りの週刊誌が家にあったんです。それをずっと読んでいたので、漫画を好きになるのは自然なことでした。
中学生になると少年誌がちょっと物足りなくなってきて、その時たまたま手にとったのがラノベ(※)でした。特に『ブギーポップは笑わない』(KADOKAWA)は、当時萌えっぽいラノベが多い中、サスペンスっぽいテイストというか、今思うとラノベの域を超えている感じで……よくできてるんですよ。読み物としても面白かったし、イラストが緒方剛志さんという、アニメやゲームのキャラクターも描いている方で、すごく好きでした。

でも、ラノベを読んでいることはずっと隠してたんです。サッカーのクラブチームに入っていたんですけど、チームメイトには絶対バレてはいけない。バレたら「オタクだ!」とイジられると思っていました

※「ラノベ」
ライトノベル。小説のジャンルのひとつ。明確な定義や条件はないが、表紙や挿絵にキャラクターのイラストを多用しているものが多い。

文庫本を読む岩井さん
『ブギーポップは笑わない』の表紙
発行:株式会社KADOKAWA (電撃文庫)
著者 :上遠野浩平 イラスト: 緒方剛志

――「オタク」という言葉に持たれるイメージって、当時と今では全然違いますよね。

当時は、まだまだ蔑まれている言葉でしたからね。そのクラブは地元から少し離れたところにあって、同じ中学のヤツはいなかったので、自分ひとりで電車に乗るんです。ラノベを読みながら練習に向かうんですけど、グラウンドが近づくにつれてチームメイトが乗り込んでくるので、ヴェルディ川崎(現:東京ヴェルディ)のタオルで隠しながらこっそり読んでました。チームメイトにはバレずに済みましたけど、学校で一人だけ『ブギーポップは笑わない』を読んでる女の子がいたんです。その子が描いた絵を見せてもらったり、二人でこっそり作品の良さを語ったりしていたら、最終的に告白されました。いい子でしたけど、残念ながら好きなタイプじゃなかったので断りました。

――その女の子は相当岩井さんに運命を感じていたと思います。

そうですかね。現実はラノベみたいにいかないですよね。ちなみに、自分のエッセイ『僕の人生には事件が起きない』と『どうやら僕の日常生活はまちがっている』(ともに新潮社)は、両方ともラノベを意識してタイトルをつけてます。

岩井さんの著書『僕の人生には事件が起きない』と『どうやら僕の日常生活はまちがっている』

――確かに、有名作品のオマージュになっていますね。少し話を戻して、先ほど「キャラクターよりもアニメーションが好き」とお話しされていましたが、岩井さんならではのアニメの楽しみ方ってありますか?

コマ送りにして、絵がどう動いているのを観たりします。それは、2004年に放送されていた『巌窟王』(テレビ朝日系)っていう作品の影響で、貼り絵のような独特ですごく実験的な表現方法に、とても衝撃を受けました。
あと『モノノ怪』(フジテレビ)もすごいんですよ。江戸時代が舞台のストーリーで、和紙の質感を美術として取り入れていて。他にも映画『MIND GAME(マインド・ゲーム)』(アスミック・エース)や『ヒューマンバグ大学 不死学部不幸学科』(TOKYO MX)とか、アニメそのものというよりも表現方法に目がいってしまいます。監督で言うと湯浅政明監督が好きです。映像が凝っているので、ストーリーはシンプルなのが特にいいですね。

腕を組んで話す岩井さん

――1クールのアニメは全部観ていると伺ったんですが……。

はい、初回は全部観ます。大体40〜60本ぐらいあるけど、面白いと思うものを残していって、平均25本ぐらいは毎クール観ています。家にいるときは、ずっとアニメを流しっぱなしにしていて、観ながら寝落ちしちゃってます。

――作品の舞台となったロケ地をめぐる“聖地巡礼”はしますか?

します。登場人物と会えるんじゃないかと想像しながら歩くのが好きですね。『恋は雨上がりのように』(フジテレビ)は、主人公がファミレスでバイトしているので、モデルになったといわれる川崎の「ガスト」に行きました

『恋は雨上がりのように』のDVDジャケット

最近は、『ヤマノススメ』(テレビ東京ほか)の舞台が埼玉県の飯能で、主人公たちが登る天覧山に登りました。現場に行って、ここがこうやって描かれてるんだと思うと、興奮しますよね。妹もアニメが好きなんですけど、『夏目友人帳』(テレビ東京)の舞台になった熊本県の人吉に行ったらしくて、そんなにハマったのかと気になって観たら面白くて自分もハマりました。

お店で見つけた岩井的オススメアニメ&思い出の漫画

――さて、フロア全体を1周しましたが、気になったのはどの売り場でしたか?

ここはDVDの量が半端ないですね。我が家にあるものは大体あったかな。気に入った作品の円盤は全部買うようにしてるから、相当数あるはずなんですが。

棚に手を置く岩井さん

――店内にあった作品で特に好きなものを教えてください。

まずは『SHIROBAKO』TVシリーズ(TOKYO MXほか)ですね。アニメーション業界を描くアニメなんですよ。劇場版を観に行ったら、ちょうどコロナ禍が始まったタイミングで映画館に俺ひとりだったのを憶えてます。貸切状態で観ました。

SHIROBAKOのBlu-ray BOX1

『同級生』(アニプレックス)は、2016年に公開されたアニメ映画なんですけど、その年一番面白かった作品です。とにかく絵が美しいので、BL耐性がない人が観ても楽しめると思います。

同級生のDVDジャケット

『映画大好きポンポさん』(Happinet)も面白かったです。髪の毛がオレンジの女の子が映画を撮るお話です。

映画大好きポンポさんのDVDジャケット
『映画大好きポンポさん』Blu-ray発売中 6,380円(税込)
販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
©2020 杉谷庄吾【人間プラモ】/KADOKAWA

『舟を編む』(フジテレビ)もいいんですよ。原作は三浦しをんさんの小説で、アニメのキャラクター原案を『昭和元禄落語心中』(講談社)の雲田はるこ先生が描いてるんです。

――実写で映画化もされた作品ですね。

そうなんですね。ただあくまでもアニメが好きなので、実写映画は、ほとんど観ていないんです。

舟を編むのDVDジャケット
本をチョイスする岩井さん

漫画『ジョジョの奇妙な冒険』(集英社)は5部が好きです。ちょうど『ジャンプ』を読み始めたのが4部の途中だったんです。だから最初から読めた5部は思い出深いですね。キャラクターは、血みどろで体張るところが堪らないので、グイード・ミスタが一番好きです。あと『疾風伝説 特攻の拓(かぜでんせつ ぶっこみのたく)』(講談社)はバイブル。1巻だけ父親に買ってもらって、ヤンキー漫画の中でも一番好きな作品です。

特攻の拓を持つ岩井さん

『幽☆遊☆白書』(集英社)も14巻だけ持ってました。たまに父親が「好きな漫画買ってやる」って買ってくれることがあって、ちょうどそのとき最新刊が14巻だったんです。「普通1巻を買うだろ」って言われたんですけど、なんでだろうなぁ、最新刊が欲しくて。母親の影響で、家にはあまりたくさん漫画を置いてはいけない雰囲気もあったので、買ってもらった巻をボロボロになるまで読んでました。

幽☆遊☆白書14巻

ーーあ、岩井さんが原作を担当された『ムムリン』(講談社)がありましたよ。

ムムリンを持つ岩井さん
『ムムリン』(講談社)岩井さんが原作、佐々木順一郎が作画を担当した漫画で、2021年『週刊ヤングマガジン』(同)に掲載。その後『ヤンマガWeb』で配信され、単行本が3巻発売されている。仕込みではなく、たまたま店頭にありました。

本当だー。中古なのに400円もしますね。

――ブックオフに自分が携わった本が置いてあるってどういう気持ちですか?

嬉しいですよ。連載も終わって、新しく刷られることはないし、捨てられることも多い中、ブックオフで売ってあったら、誰かが読んでくれる可能性がありますからね。『まじかる☆タルるート』くんもそうだし、『DEATH NOTE』を描いた小畑健先生の『人形草紙あやつり左近』(ともに集英社)も、ブックオフで見つけて買いました。そんなふうに昔の作品や、あまり刷られなかった作品と出会えるのは貴重ですよね。

DVD売り場で商品を見る岩井さん

――本日はお話伺わせていただき、ありがとうございました。

はい。最近はめっきりブックオフに行かなくなってしまいましたが、思い出はたくさんある場所です。もう今はないそうですが、芸人になってからも渋谷のセンター街にあった店舗にスーファミのゲームを買いに行ったりしてました。これからもたまに古いものと出会いたいと思ったときに、行くかもしれません。

[今回取材したお店はこちら]

BOOKOFF 池袋サンシャイン60通り店
2022年11月にリニューアル! ホビーやアニメグッズを買う時のファーストチョイス店になるべく大幅に売場を拡大。レコードの取り扱いも始めました。
住所:東京都豊島区東池袋1-22-10 ヒューマックスパビリオン
電話:03-5953-2325
営業時間:10:00~22:00
HP:https://www.bookoff.co.jp/shop/shop20422.html

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TEXT:村上由恵
PHOTO:井川拓也

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