ブックオフに一度でも足を運んだことがある人ならば、誰しもが口ずさめるであろう「本を売るならブックオフ♪」。このメロディはいったいどのようにして生まれたのでしょうか。作曲者に直接インタビューし、その誕生秘話を探ります。

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こんにちは。ライターのオケモトです。
CMでお馴染みのこのメロディ、ご存じでしょうか?

※下の▶ボタンを押すと、音声が流れます!

ブックオフといえばこの曲!「本を売るならブックオフ♪」

この耳に残る気持ちいいメロディ! これを聴くと本がずらっと並ぶブックオフの店内が脳裏に広がります。
そこでふと思いました。このメロディを作った人は誰なのだろう?
気になる、知りたい。人は誰しも知ることで成長できるから。

※この取材は緊急事態宣言発令前に行われたものです。撮影時のみマスクを外しています。

静岡に来たオケモトさん

ということでやってきました、静岡県静岡市!! 静岡県は筆者の地元でもあります。

徳川家康像とオケモトさん
静岡駅前にある徳川家康像

大物にインタビューするとなると緊張するな。静岡駅前の徳川家康さんで練習しておこう。
やっぱり本能寺に討ち入りされた時は焦りましたか?

滝尾さん
???

???:本能寺で討ち入りに遭ったのは織田信長ですよ。

オケモト(以下オケ):あ!!!! いつの間にか現場についている。

「本を売るならブックオフ♪」制作者を直撃! 作曲はまさかの鼻歌

 滝尾さん

滝尾浩実さん
1960年静岡県生まれ。東京でCMやビデオパッケージの企画制作、テレビ番組のプロデュースに携わった後、故郷の静岡へ。㈱SBSプロモーションでもCMやビデオパッケージ、テレビ番組の制作を担当。これまでに制作したCM本数は1,000本を越える。好きな本はノンフィクション、ルポルタージュ。

オケ:今日取材させていただく滝尾さん! よろしくお願いします。

滝尾さん(以下滝尾):はい。よろしくお願いします。

オケ:早速ですが「本を売るならブックオフ♪」のメロディはどうやって作られたんですか?

 滝尾さん

 

滝尾:そもそも私は作曲家ではないんですけど、大丈夫ですかね?
このメロディができた1992か1993年、私は静岡放送のグループ会社、SBSプロモーションというところでディレクターをしていました。

オケ:え! 作曲家じゃなくてテレビのディレクターが、なぜブックオフのサウンドロゴ(※)を?

※注:サウンドロゴとは、企業名や商品名などをアピールするための短い音源のこと。「本を売るならブックオフ♪」もその1つ。

滝尾:まだ今ほど大きくないブックオフさんがローカル向けにCMを作るということで。
静岡放送のアナウンサーを介して、ブックオフの創業社長と懇意にされていた人からSBSプロモーションに相談があり、私が制作担当として出向きました。

オケモトさん
作曲家じゃないのに作曲?

オケ:なるほど。「本を売るならブックオフ」という歌詞は最初からあったんですか?

滝尾:はい、ブックオフさんからご指示いただきました。

オケ:あったんだ。

滝尾:私もあまり事前知識がないまま営業に連れられて行ったものですから、本を売るという発想がなく本を買うならじゃないか?と思ってたんです。

オケ:それじゃ新刊書店じゃないですか! 社長にめちゃくちゃ怒られたんじゃないですか?

滝尾:幸い無事でした。

オケ:懐が深い。

滝尾さん
セーフでした……。

滝尾:そこで「ブックオフは新しいリユースのビジネスで、本を売って下さるお客様こそが大事なんだ」「本を売ってもらうためのコマーシャルを作りたい」という話を聞いて。

オケ:本を売ってもらうためのCMってわけですね。

滝尾:コマーシャルを作る上でブックオフの社長に言われたのが、「ブックオフは今までの古書店とは違う。コンビニやスーパーマーケットみたいな明るい店舗のイメージだ」と。

オケ:従来の古書店のイメージを変えたかったのか。確かにブックオフは明るいですね。

 滝尾さん

滝尾:サウンドロゴでも、社名と一緒に会社のメッセージを伝えたいということでした。

オケ:サウンドロゴ!「本を売るならブックオフ」のことですね。

滝尾:そうです。それを聞いて私は「そんなおしゃれな店のCMならおしゃれなサウンドロゴを作らなきゃ」って思って。

オケ:おしゃれっていうとどんな感じですか?

滝尾:広告には流行りがあるんです。
当時、メロディをつけて社名を歌いこむっていうのは一段落していて。
その当時大手は「イッツアソニー」みたいに節をつけないでささやく、ボイスロゴっていう方がかっこいいという流れだったんです。

オケモトさん
メロディがないパターンね。

オケ:ああ、なるほど! なんとなくわかりました。流行りがあるんですね。

滝尾:しかしブックオフのCMはローカルで流すものだから、ベタに直球でいった方がいいと思いました。

オケ:あえて流行に乗らないことを選んだんですね。
でも滝尾さんは作曲家ではないとおっしゃっていましたが、どうやって曲を作ったんですか?

滝尾さん

滝尾:曲を作る時は全て鼻歌なんですよ。

オケ:えええ!! ギターを弾きながらとかではなく?

滝尾:私は一切楽器ができません。でも幼い頃からテレビから流れてくる心に引っかかる曲を頭の中で覚えて口ずさむみたいなところがあったみたいで、鼻歌は得意ですね。

オケ:恐れ入りました。

インタビュー中の様子
滝尾さん、恐るべし!

滝尾:これまでもコマーシャルソングとかサウンドロゴ作ってきたんですけど、ずっと鼻歌で作ってました。
実は妻がピアノとエレクトーンの講師で、僕が鼻歌を歌うと妻がそれをピアノで弾いてくれるんです。

オケ:へえ!

滝尾:ピアノに合わせて歌って、カセットに録音。それをクライアントのところに持って行ってプレゼンをやっていました。まさに家内制手工業ですね。

オケ:奥さんがサポートしていたんですね。

滝尾:「本を売るならブックオフ」という文言は決まっていたので、それにどう節をつけるかということでいくつか録音したのを出したんですけど、ことごとくNG。20曲か30曲は出したけど全部だめだった。

オケモトさん
考えただけでもつらそう……。

オケ:うわー、すっごい厳しいじゃないですか。僕だったら嫌になっちゃうな。

滝尾:その時にブックオフさんから言われたのが「CMはあなたの作品じゃないんだ」と。
賞を取りたいのなら別のところで取りなさいと、もっとわかりやすくストレートにやりたいんだと。

オケ:わかりやすく……。

滝尾:でもCMってきちんと正座して見るものではなく、何かのついでに見るものじゃないですか。

オケ:まあCMの間にトイレに行ったりもしますからね。

滝尾:だから何かのフックが必要で、そこを工夫しないと……というような理屈も言ったけど。

オケ:譲りませんね。

滝尾さん
確かに見てもらうためのフックは必要ですよね。

滝尾:でもブックオフさんは「うちはわかりやすくやりたい」という一点張り。
それで最初のプレゼンに失敗して、困ったなと自宅で鼻歌を歌いながらあーでもないこーでもないってやってたんですけど。

オケ:はいはい。

滝尾:そこで、これいけるかもしれない!って思ったフレーズを録音してたら妻に「あなたの得意なメロディじゃないじゃん。いつももっと抜けた感じでやってるじゃない」と言われて。

オケ:奥さんはよく見ていらっしゃったんですね。

滝尾:こういうことじゃないの?ってピアノを弾いたのがあの「本を売るならブックオフ♪」のメロディだったんです。

オケモトさん
ということは……?

オケ:え? じゃああの曲を考えたのは……?

滝尾さん

滝尾:今白状しちゃうと、あれを作ったのは僕じゃなくて僕の奥さんだね。

オケ:奥さんすごいですね!!

滝尾さんとその奥様
1993年、サウンドロゴを作曲した当時の滝尾さんと奥様。写真はモルディブにて。
滝尾さんとその奥様
制作時期より少し前だそうですが、東京ディズニーランドでの写真も提供いただきました。

滝尾:でも僕はその時、まだこれだ!と思えなくて。自分が先に考えてたものがいいじゃんと思ってたから。

オケ:自分で作ったものですから、よりよく聴こえてるでしょうね。

滝尾さん

滝尾:そう! 自分の中ではハマっていて。それで、僕が考えたのと、奥さんが考えた2つを録音してまたプレゼンしたんですね。そしたら割とすぐに「いいじゃない!」と。

オケ:決まった!

滝尾:どっちをいいじゃないと言われたのか覚えてなくて、なぜなら自分の方をまだあきらめてなかったから。

オケ:滝尾さんが作った方を応援したくなってきました。

MDとDATテープ
ブックオフのサウンドロゴが入っている貴重な音源。右のDATテープには、滝尾さんと奥様が作った音源が残っている。

滝尾:だから2つ とも仕上げちゃった。
探してみたらこのDATテープが出てきたんですけど、「ブックオフサウンドロゴ マザー※」って書いてある。

※注:「マザーテープ」の略。編集や録音などの作業工程が終了し、完成したテープのこと。

滝尾:往生際が悪いもんだからAとBがあるんですけど、僕が作った方をA、妻の方をBにしました。
しかも、こだわってちょっとした違いのA-1とA-2の2種類用意した。Bは1パターンだけ。

オケ:なんかせこいな~。

DAT
これがその証拠です。

滝尾:で、後日両方聴いていただいて、そしたら即決で「いいね! それでいこう」と。

オケ:おお!!

滝尾さん

滝尾:それが、妻が作ったBだったの。

オケモトさん
そうなりますよね~。

オケ:だっはっはっはっはっはっは!
わかってたけどめっちゃ面白いですね。

滝尾:Bか~って。ブックオフのイメージは明るくておしゃれって言ったじゃないって。奥さんの方かって。でも決まったんでもちろんそれでいこうと。

オケ:いい話だな~。奥さんお手柄ですね。

滝尾:感謝です。一瞬自分が作ったことにしちゃおうと思ったけどね。

今、陽の目を浴びる幻のAパターン

MDとDATテープ

オケ:このDATテープにAパターンも入ってるんですよね。

滝尾:はい。

オケ:聴いてみたいけど今DATテープを再生するの大変だろうな。どこか再生できる場所探さないと……。

滝尾:聴けますよ。というか、MP3にしておきました。

インタビュー中の様子
神がいた。

オケ:え? 今なんて?

滝尾:ここ放送局だからね、報道ライブラリーの隅っこに1台だけ再生機が残ってて再生できました。

オケ:まさにこの日のために残っていた再生機じゃないですか! 聴きましょう!!

音声を再生する様子
どんな曲なんでしょう……!

滝尾:では幻のAパターンを聴いてみましょう。

オケ:本邦初公開ですよね!ドキドキ……。

※下の▶ボタンを押すと音声が流れます!

本邦初公開!幻の「本を売るならブックオフ♪」
オケモトさん

オケ:違う! なんだこの感じ、地方都市と言うか。ドラッグストアって感じですね。

滝尾:ドラッグストア! まさにそれだね。今思うとなんでこれにこだわってたのかと恥ずかしいくらい。

オケ:でも、こっちでも全然いいですよ!
この「本を売るならブックオフ」のサウンドロゴについて他に秘話などありますか?

滝尾さん

滝尾:う~ん、そうだなあ。あのサウンドロゴの最初についてるアタック音、シャララ~♪みたいなの。あれはサウンドロゴを仕上げてくれた浜松市にある音楽スタジオ「スタジオ・タクト」の串田亨さんがつけたやつだね。

オケ:そうだったんだ! 今となってはお馴染みの音って感じですね。
「本を売るならブックオフ♪」の歌は誰が歌ってるんですか?

滝尾:あれは、歌手ではなくてヤマハ音楽教室の生徒さん。サウンドロゴを仕上げた串田さんの音楽教室の教え子だったそうです。

オケ:そうなんだ!奇麗な声で耳に残りますよね。

滝尾さん
まさかの生徒さんでした……。

形が変われど長く使われる「本を売るならブックオフ♪」

オケ:本を売るならブックオフ、滝尾さん的にはどういう曲ですか?

滝尾:まず、作らせていただいたことがありがたい。ちゃんとBを選んでもらってよかったですね。Aならここまで流行ってなかったでしょう。

オケ:このサウンドロゴ、めちゃくちゃ浸透してますもんね。

 滝尾さん

滝尾:ブレずに長く使ってくれたのがよかったと思いますね。あとはシンプルに5つの音だけで作ったことのわかりやすさがよかった。わかりやすさって大事だね。

オケ:滝尾さんは今までもCMを作ってきたとおっしゃっていましたが、どんなものがありますか?

滝尾:静岡放送で流れるSBSマイホームセンターのCMはずっと作ってて、50年ほど前に大先輩が作って今でも使い続けているCMソングをセルフパロディしたCM(※)は賞を取りましたね。

※注:静岡放送でのみ流れているSBSマイホームセンターのCM「マイホーム、マイホーム♪」「マーイホーム♪」。これがわかるあなたは正真正銘の静岡県民です。

オケモトさん
静岡県の皆さん、聞きましたか……?

オケ:えええ!? 静岡県民なら誰もが知っているあのマイホームセンターのCMを作っているのも滝尾さん!?

滝尾:はい。そうです。

オケ:今までのご無礼大変失礼しました。あなたは静岡県民の誇りです。

滝尾:大げさだなあ。

滝尾さん

滝尾:まあでも、自分が作ったものが、形が変われど長く使われるのは嬉しいですよね。感謝しかありませんね。これからもあのブックオフのサウンドロゴを作ったのは僕だって言い続けます(笑)。

オケ:今日は貴重なお話と音源を聴かせていただき、ありがとうございました!

まとめ

滝尾さんとオケモトさん

「本を売るならブックオフ」のサウンドロゴは滝尾さんの奥さんが提案したものだったということがわかりました。
更に滝尾さんが作った幻のAパターンも発掘され、それだけで意義がある取材だったといえるでしょう! 僕は記事を書いているうちにこのAパターンが結構好きになってきました。

現在も形を変えて受け継がれ続けるサウンドロゴ。ブックオフさん、これからも滝尾さんの「本を売るならブックオフ♪」を使い続けてくださいね~。

オケモトさん

TEXT:オケモト
PHOTO:宇佐美亮

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