ブックオフが、百貨店などで「はるのひろば」というポップアップストアを展開していることを、みなさんはご存知だろうか。
その名は、花が咲き、鳥たちが歌う「春」と、フィンランド語で“願い”の意味を持つ「halu」という単語を掛け合わせてつけられた。
このプロジェクトを担当しているのは、社歴20年の竹内光代さん。竹内さんは、ブックオフの店頭で長らくアパレルを担当。そしてエリアマネージャー等を経て、現在はSDGs推進室グループのグループ長に。「はるのひろば」を始めとするサステナブルな取り組み・事業の窓口として、幅広い業務をこなす。
「本だけじゃないブックオフの取り組みをもっと知ってほしい。そして、リユースがみなさんの生活のなかでもっと身近な存在になれば」――。そう語る竹内さんの仕事に迫った。
「古いモノに、いかに新しい価値を提供できるか」が基準
2023年8月中旬。うだるような暑さが続くとある日にBOOKOFF SUPER BAZAAR 綱島樽町店を訪ねると、作業に追われる竹内さんが出迎えてくれた。2023年10月に西武池袋本店で行われる「はるのひろば」の準備真っ只中なのだという。
6回目の開催となる今回の出店。竹内さんは責任者として、百貨店側との調整、アイテム選定のほか、催事場のレイアウトや当日のスタッフの手配・マニュアル作成などの指揮をとっている。
レイアウトやアイテム選定には、自分なりのこだわりがあるという。
「古き良き時代のアイテムに価値を見出すレトロ雑貨、古着をアップサイクルする自社ブランド“Reclothes(リクロース)”(※1)など、会期や会場によってラインナップを変えています。また、弊社は廃棄されるCDをリサイクルした再生素材“CDプラ”の活用や販売も行っているのですが、そういった事業を知っているお客様はほとんどいらっしゃいません。リユースにとどまらないブックオフの取り組みを、見て触れて考えてもらえる催事にしたいと考えています」
※1「リクロース」
ブックオフの古着をアップサイクルする取り組み。アップサイクルのファッションデザインコンテスト「Reclothes Cup(リクロースカップ)」と、古着をデザイン性の高い服に仕立てる自社ブランド「Reclothes(リクロース)」の2つがありここでは後者を指す。
ここでいうレトロ雑貨とは、ブックオフで販売されているモノを中心とした、昔懐かしいリユースアイテムのこと。こけしや木彫りの熊、昭和レトロのグラスなどは毎回人気なのだそう。
ポップアップストアに並ぶ商品の全てがリユース・リサイクル・アップサイクルのアイテムなので、都合よく揃うわけではない。全国各地の店舗の在庫状況を確認し、どんなアイテムを展示したいかを各店舗のスタッフに伝えて商品を集める。魅力的なポップアップにするためのセレクト作業は簡単ではない。「でも、たのしいですよ」竹内さんはチャーミングに笑う。
レトロ雑貨に合う茶箱をディスプレイに使ったり、衣紋(えもん)掛けを什器にしたり……。売り場には、竹内さんならではのセンスが光る。ブックオフでの売り場づくりの経験に加え、プライベートでも雑貨屋やアパレル店を巡るのが趣味な竹内さんだからこそできることだろう。
群馬県の「REMARKET」からはじまった「はるのひろば」
「はるのひろば」は、もともと「REMARKET(リマーケット)」の名前で出店していた時期がある。これはBOOKOFF SUPER BAZAAR 17号前橋リリカ店(群馬県)に併設されている店の名前だ。
リマーケットは「“使い方”を創造し、“捨て方”をデザインする」というコンセプトのもと、ブックオフと株式会社モノファクトリーがコラボして立ち上げたリユース・リサイクルアイテムの店。協業する(株)モノファクトリーが「百貨店にリマーケットを出店してみませんか」と持ち掛けてくれたことが、はるのひろばの始まりだったと言える。
このポップアップがほかの百貨店担当者の目に留まったことで、次々と各地で出店するに至った。2023年4月の大阪出店の際に、ブックオフのみで出店する屋号を決める流れになり、「はるのひろば」が生まれたのだそう。
店名の一部でもある「はる」は、竹内さんが一番好きな季節でもある。温暖化が進み、季節の変わり目が曖昧になってきていることを実感する近年、美しい四季を守るためには、ひとりひとりの意識的な行動が欠かせない。
「ブックオフは、売れ残ってしまったモノや買取にてお値段がつかずお引き取りしたモノをリサイクルすることで、可能な限り焼却処分されないように努力しています。CO2発生を抑制し、環境への負荷を軽減する。ブックオフを利用することは、実は身近で簡単な環境配慮につながるんです」
近年リユースショップやフリマアプリが増えている反面、過去1年でリユース品を購入したことがある人は日本国内の人口に対して約3割(※)しかいないのだという。
※日本リユース業協会「リユース業界について」より
まだまだリユースが浸透しているとは言い切れない日本の現状。かわいいレトロ雑貨を買っていたら、自然とそれが環境配慮につながっていた――。そんなサイクルを目指すのが、この「はるのひろば」だ。
竹内さんは、店頭に立つことが一番好きなのだという。理由を尋ねると、「ブックオフってこんな取り組みもしていたんですね」という言葉を聞く機会が多いからなのだとか。「はるのひろば」の目的が果たせていることを、一番ダイレクトに感じる瞬間だからなのかもしれない。
「リユースをもっと身近に」ブックオフの挑戦は続く
2023年10月の「はるのひろば」は、西武池袋本店の7階リビングフロアで行われる。同じフロアでは別の大きな催事も行われ、年齢を問わずさまざまな人が立ち寄るエリアだ。
「あまりリユースを利用されたことがない方に見ていただきたいです」と竹内さん。今回も、今まで同様人気だったレトロアイテムを中心に、さまざまなアイテムが並ぶ予定だ。
たとえば、過去の催事で人気だったレトロ雑貨やタイプライターなどは、今回も展示する予定。
そのほかにも、買取したジュエリーから厳選した石を二次使用して新たにデザインされたサステナブルジュエリーや昔懐かしいレコードなども展示が決まっている。ちなみにレコードは、今ブックオフ店舗でも急速に取り扱い店舗が増えている商材の1つだ。
さらに今回の展示では、使わなくなった本・CD・DVDのほかゲームソフトやおもちゃ、服・バッグ・靴・おもちゃなどを回収する「チャリティボックス」を設置する予定なのだという。
最後に、竹内さんに今後の「はるのひろば」の展望について話を聞いた。
「はるのひろばをきっかけに、本だけじゃないブックオフのサステナブルな取り組みを知ってほしいというのが一番の願いです。はるのひろばは、そのためのひとつの手段。なので、今後形は変わっていくかもしれません『こんなモノ、ブックオフに持って行っても売れないかな?』って思っていたけど、使わないし捨てるのはもったいないから持っていってみようかな……など、もっとブックオフのことを身近に思ってもらえたら一番うれしいです」
竹内さんのミッションは、ブックオフの取り組みを社外に広めていくこと。「どんどんバージョンアップさせていきたい」というその言葉からは、常に挑戦を意識する竹内さんの姿勢が感じられた。
今後どのように「はるのひろば」が展開していくのかがたのしみだ。みなさまもぜひ、足を運んでみてはいかがだろうか。
【次回はるのひろば概要】
場所:西武池袋本店 7階インテリア特設会場
会期:2023年10月10日(火)~10月18日(水)
営業時間:10:00~21:00(日祝のみ20:00まで)最終日の営業時間は未定
※買取は行っていません
構成:あかしゆか
PHOTO:井川拓也、広報・SDGs推進室
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