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山本ゆりさん
料理コラムニスト。1986年、大阪府生まれ&在住。3児の母。『syunkonカフェごはん』(宝島社)シリーズなど、書籍の売り上げは累計で700万部を超える。身近な材料で簡単にできる料理と、ユーモアあふれる日常を綴ったブログが大人気。

子どもの頃から活字中毒。でもお小遣いには限りがあって……

※取材・撮影時のみマスクを外しています

ーー山本さんはかなりの読書家なんですよね。どんな本がお好きなんですか?

はい。子どもの頃から本が大好きで、トイレにもお風呂にも持って入っていましたし、ベッドの下も本でいっぱいで。旅行など特別なとき以外読まない日はなくて、常に何かを読んでいるという感じでした。

ジャンル問わず読んでいましたが、小さい頃から食べることが好きだったので『こまったさんシリーズ』(あかね書房)や『わかったさんシリーズ』(あかね書房)など、とにかく食べ物が載っている本が好きでしたね。そこから料理本、レシピ本なども見るようになりました。

小説ももちろん好きですし、エッセイや漫画、ミステリー、自己啓発本、本当になんでも読みます。ずっと何かしらの本を読んでいるので、何か特別な一冊があるというわけではないのですが、さくらももこ先生のエッセイはすごく好きでずっと読んでいました。

ーーそれだけたくさんの本を読もうと思ったら、かなりお金がかかりますよね……

そうなんです。大きな声では言えませんが、立ち読みも結構していました(笑)。あとは自宅の近くに小さな古本屋さんがあって、そこにもよく行ってましたね。

ブックオフができてからはもう、めちゃくちゃ活用していました。最初に行ったのはたぶん大学前のBOOKOFF  吹田関大前店で、大学生の頃でしょうか。私の知っている「古本屋さん」とあまりに違っていたので衝撃でした。本はきれいだし、値段もやすいし、探しやすい。それに最新の本も結構あって、新刊書店並みの品揃えに本当に驚きました。昔ながらの古本屋さんも味があってとても好きですが、そことはまた違った魅力がありました。

山本さんが初めて訪れた、BOOKOFF 吹田関大前店

それ以来、とにかく頻繁に通いました。週末は必ず書店とブックオフです。洋服を買いに行くつもりで出かけても、最終的にブックオフで立ち読みしてるんですよ(笑)。

学生時代はお金がなく、1,000円以上するカラーの料理本なんてなかなか手が出ないのですが、ブックオフなら2冊も3冊も買えちゃうわけです。気になる本があればまずはブックオフに行っていました。

一番通ったのは大学時代ですね。学校の前にあったブックオフに本当によく行っていて、料理をするようになってからは、古いレシピ本や昔の料理雑誌を探すようになりました。

※コロナウイルス感染拡大防止の為、現在は立ち読みをご遠慮いただいております。

当時、実際にブックオフで見つけた雑誌

ーーなぜ昔の雑誌や料理本を?

単純に、美味しそうとか雰囲気が好きなのが大きいですが、盛り付けや食材など、料理にも流行り廃りがあって。今ではあまり見ない盛り付けや調理法を参考にすることもありますし、単純に眺めているだけでも発見があっておもしろいんです。

あとはブログ用の写真を撮るための参考にもしていました。ブログを始めた頃はブックオフで買った『天然生活』(扶桑社)やカフェご飯の料理本などをよく見ていたのを覚えています。
影響されすぎないように、レシピはあまり見ないで、主に小物使いや写真の撮り方、テイストなどを参考にしていました。
最新のものはネットでいくらでも探せますが、バックナンバーや廃刊になった昔の雑誌などが買えるのはブックオフくらいでしたから、すごく助かりましたね。

ブックオフで出会った本の盛り付けを参考に生まれたレシピも。
【簡単!!カフェごはん】おすすめです*天津飯野菜乗せ

”著者”として、ブックオフで本を買うことについて考える

ーー欲しい本がやすく買えるのがブックオフの魅力でもありますが、ご自身の本がブックオフで売られることについてはどう思われますか?

どこであろうと、読んでもらえるだけでうれしいです。

捨てられるよりは売って、また別の誰かが手に取ってくれた方がうれしいですね。読者の方にも「最初はブックオフで買いました」と言われることが多いですし、なんなら私も自著のまえがきに「今これをどこで読んでいますか?ブックオフですか?」と書いたくらいです(笑)

自分もそうでしたが、ブックオフで買った作家さんの本がすごく気に入れば次は書店で新品を購入することって多いと思うんです。中身がよく分からないまま定価で買うのは値段によっては抵抗がありますが、ブックオフなら気軽にお試しできますよね。最初の一歩を後押ししてくれるというか、門戸が広がる感じ。

ーーたしかにブックオフの価格帯なら気軽に買えますよね。

そうなんです。
「ちょっと見てみたいな」程度で何冊も新しい本は購入できないじゃないですか。
私は子どもができたときに育児に関する本や漫画をいくつかブックオフで買いましたが、そういった新しい分野の興味を満たすのにお金があまりかからないのが本当に魅力です。

例えば、釣りに興味があっても、ハマるかどうかってやってみないと分からないじゃないですよね。でも初期投資100円、200円なら始めやすい。
書店さんと古本屋さんって一見、商売敵のようですが、ブックオフで色々な作家さんや本の魅力が伝わると、結果それが「本の購入」に繋がっていくこともあると思います。

ーー今やレシピは無料で手に入る時代ですが、ブックオフや書店で本を購入するメリットはあると思いますか?

あると思います。
本って単なる情報ではないので、「レシピが知りたい」と「本が欲しい」という気持ちは別物なんじゃないかなと思います。

私が本を作るときも、「持っておきたい」と思ってもらえるように、無料で見ることができるブログとの差別化はかなり意識をしています。レシピを調べるだけならむしろブログの方がパッと検索できますし。

本はデザインや装丁、文章、開いたときの雰囲気、レシピの順番含め1つの作品だと思っていますし、本ならではの遊びの要素や、本でしか見られない新作レシピを入れることにもこだわっています。でも、仮にレシピがすべてネットに載っていたとしても、本としての需要はあると思っていて。

昔は中身を隠して「知りたかったら買ってください」という売り方が主流でしたが、中身が分からないものにお金を出したくないという人の方は結構多いと思うんです。漫画のようなネタバレが致命的になるようなジャンルは別として、端から端まで読んだ上で、手元に置いておきたいと思えるものなら、買ってもらえるのではないでしょうか。だから私も出し惜しみはしませんし、「買わな教えへんで」みたいなことはしないです(笑)。

多忙な日々の中で生まれた「これでええやん」な選択肢

ーー会社員をしながら料理ブログを続けてこられたと思うのですが……率直に、大変ではなかったですか?

求人広告の営業をしていたんですが、とにかく忙しくて。終電で帰って家に着くのは0時を過ぎることがほとんど。それで朝5時ごろ起きてブログを書いたり。
そんな多忙な営業時代もブックオフにはすごく助けられていました。営業中に何度も飛び込んで立ち読みしてましたから(笑)。

お金のない学生時代から社会人まで人生のほとんどにブックオフがあって、ちょっと大袈裟に言えば、ブックオフがなかったら、今の自分はなかったです。

ーー二足のわらじで働いた後、結婚・妊娠を機に料理コラムニスト一本に絞って、そこからは仕事と子育てを両立されているんですよね。

両立はできてはいないと思います(笑)。
時間の作り方が本当に分からなくて、子どもに「となりのトトロ」を1日3回見せたあたりで限界を感じて保育園を探し始めました(笑)。

最初は私みたいな家で仕事をしているような人は保育園なんか入れちゃダメって思い込んでたんです。
でも、もう無理って思って保育園に入れたら、その方が子どもにとっても私にとっても良かったってことが分かりました。今、3人の子どもがいますが、みんなずっと私が働いているところを見ているので、もうそれが当たり前になっていますね。

ーーそういった多忙な日々だからこそ、身近にあるもので簡単に美味しくできる工夫が生まれるんですね。

そうですね。
それもありますが、学生時代から、家にあった料理本の材料が本格的すぎて作れなくて、全部スーパーで買える材料で作っていたんです。
ファッション誌で素敵なコーディネートを見ても全部そのブランドで揃えないじゃないですか。似たような色やデザインの服を手頃なブランドで揃えますよね。それと同じ感覚で料理本を使っていました。

私が幼い頃はプロの先生が料理本を出すのが主流で、ブログを始めた頃は、少しずつブログから本が出始めていました。いずれにせよ、本を出すのは料理が得意な方だったので、私のような適当でめんどくさがりな奴の本はなかなか珍しかったと思います。

ブログにしても最初は「こんないい加減な作り方したら叩かれるかな」って思ったんですけど、意外と温かく迎えてくださって。自分だけじゃないんだなってことが分かってから楽になりました。
カフェご飯とかばかり載せちゃうと、普段からそんなおしゃれなものばっかり作っていると思われてしまうので、そういうわけじゃないということも常に発信するようにしています。気取ってもボロが出るだけなので。

ーーでは最後に今後のビジョンや目標のようなものがあれば教えてください。

いつも行き当たりばったりでビジョンというものが本当になくて……。ただ、おもしろい本を作りたいっていう気持ちは最初から今も変わっていないです。まだ本でできることっていっぱいあると思うし、おもしろくて、もっと現実的で、かゆいところに手が届く本を作っていきたいです。
あ、もちろん、今後もブックオフにはお世話になり続けると思いますよ(笑)。

TEXT:和谷尚美
PHOTO:井川拓也

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