人気シリーズ「3,000円ブックオフ」。ブックオフで3,000円ジャストを目指して買い物をし、結果を見せ合ってワイワイ楽しむ企画です。
が、今回はいつもの逆、つまり「各自が売りたいものを持ち込んで、その査定額が3,000円に近い人が優勝!」というルールにトライしていただきました。
早速ですが今回の参加者は、たちよみ!編集部の友達でもある3人のお坊さん。たまたま地縁があり、出ていただけることになりました。僧侶×ブックオフという組み合わせから何が生まれるのか、そして査定額3,000円に最も近づくのは誰なのか。いざ!
【過去の3,000円ブックオフシリーズ】
友だち4人で買い物対決!「3,000円ブックオフ」が意外なほど楽しすぎた
3,000円ブックオフ芸人編! 芸人たちがガチで選んだ「今必要なもの」とは?
この記事の登場人物
高野山真言宗法華寺 住職
藤井泰玄
僧侶のかたわら境内のスペースを利用し、寺カフェ・サイノツノを運営。
浄土宗称名寺 副住職
稲田ズイキ
僧侶のかたわら文筆業、企画業、フリーペーパー『フリースタイルな僧侶たち』の編集長(三代目)を務める。
浄土真宗本願寺派如来寺 副住職
釈大智
僧侶のかたわら大学講師として教鞭をとるほか、如来寺の蔵書3万冊を活用した開架型地域コミュニティ・ふるえる書庫を企画、運営。
3人の僧侶がブックオフに持ち込んだアイテムやいかに……
──ということで今回は僧侶の藤井泰玄さんと稲田ズイキさん、釈大智さんという仲良し若手僧侶トリオに来ていただいたわけなんですが……。正直、見た目的にはあんまりお坊さんっぽくないですね。
マジです。
マジです。
今日もご門徒さんのお家にお伺いして、お参りをしてからブックオフに来ましたから。
──ひと仕事してから来ていただいたわけですか! お疲れ様です。で、持ってきていただいた品物も、そんなにお坊さん感がないですね……。アンプとかタワーファンとか、あと『キングダムハーツ』のキーブレードが爆裂目立っておりますけども。
キーブレードは『キングダムハーツ』にドハマりしてたころ、メルカリで1,000円くらいで買ったやつですね。つい出来心で……。
──使わなくなった木魚とか、最近着てない袈裟とか、そういう仏教っぽいアイテムって持ち込めないんですか、やっぱり。
仏具とか、仏教系のアイテムはちょっと難しいかな……。仏壇とか木魚とか仏具類はお焚き上げをして供養することが多いですね。
着なくなった袈裟のリサイクルに取り組んでいる方もいますよ。
──へぇ~、すごい。アップサイクルの波がお寺界隈にもきているんですね。
仏教書は何度も読み込みますし……。今回僕は仏教書も持ってきたんですが、家にも同じ本があって被ってるんです。父も僕もけっこう本を買う方で、この『和辻哲郎全集』(岩波書店)も父がもう1セット持ってるんですよね。
(釈)大智くんのお寺は本がありすぎて、寺の隣で「ふるえる書庫」っていう私設図書館をやってるんですよ。近所の人に開放したりして。
──収納に困るのは、お坊さんも我々一般人も同じなんですねえ……。今日はいろいろと持ってきていただいたわけですが、その中でも「これは特に高く売れるんじゃないか」というアイテムはありますか?
この送風機が一番だと思います! そもそも25,000円くらいしたし、まだ動くしリモコンもあるし、これは高いはず。あとは『チェンソーマン』(集英社)の単行本とかもあるんで、3,000円は超えるんじゃないかな〜。あ〜でも自信ないな〜。
──どうでしょう、ここはノーヒントでいきましょう……。釈さんはどうですか?
このバーバリーのニットなんですけど、これはけっこういい値段がつくんじゃないかなと思います。あとリーバイスやアバクロのジーパンもあるんですが……。本も何冊あるかわからないんですが、とりあえず全部出してみます!
──藤井さんはどうでしょうか?
今回、レジスターを持ってきたんですよ。
──レジ!? 買い取ってもらえるのかな……。
お寺の横で「サイノツノ」っていうカフェもやってまして、お店を始める時にもらったものなんです。ただ、結局使わなかったので……。でもどうかな……一番高いのはアンプかもしれません。
──送風機にバーバリーのニットにアンプと、「オシャレなバンドマンの引っ越し」みたいなラインナップになりましたが、実際いくらで査定されるんでしょうか。ということで、一旦査定に出してみましょう!
ブックオフは「執着を手放す」トレーニングをする場所である
今回訪れたBOOKOFF SUPER BAZAAR 307号枚方池之宮店は、全国的に見ても巨大な店舗。本やCD、DVDといったアイテム以外にも、アパレル、雑貨、家電、おもちゃ、スポーツ用品などなど、大体の品物なら買取・販売しているという大型ブックオフです。
そんな枚方店の先進的取り組みが、全国的にも珍しい「TIME・OFF」の設置。こちらは買取査定中に使うことができるラウンジ的スペースで、ブックオフオリジナルブレンドのコーヒー(そんなものがあるのか……)を飲んだり、マッサージチェアを使ったり、はたまた本格的なオーディオでレコードを聴いたりボードゲームで遊んだりと、待ち時間をくつろいで過ごすことができます。
というわけで、このTIME・OFFで査定を待ちつつ、お坊さん3人にもうちょっとお話を聞いてみました。
──今回皆さんに持ち込んでいただいたものでちょっとびっくりしたのが「いい感じのアパレルが多い」ってところなんですが、お坊さんって私服は何を着ててもいいんですね。
なんかお坊さんって「こういう人」って一括りにされてイメージされることが多いですけど、実はパーソナルな部分がそれぞれあって、住職のキャラクターによってお寺の雰囲気も方針も違ったりするんです。だから、いろんなお寺やお坊さんと関わると面白いですよ。
──さきほどチラッとお話に上がりましたが、公開書庫やカフェを経営されていたり、皆さんお坊さん以外にもいろいろされてるんですね。
それぞれですねえ。それでいうと僕はお寺をやりつつ大学で講師をやったりしてますし、兼業でお仕事をしているお寺も多いですね。
僕は普通にフリーランスの編集・作家業もやってるんです。『フリースタイルな僧侶たち』っていうフリーペーパーも作ってて、(釈)大智くんは編集部仲間なんです。藤井さんは本当に物知りだから、いつも自分の興味のある単語を持ちかけて、関連する本とか音楽を紹介してもらっています。
藤井くんのところのカフェ、めちゃくちゃオシャレなんですよ。『フリースタイルな僧侶たち』も長く続いているマガジンのなかでは日本で2番目くらいに発行部数が多いフリーペーパーだったはず。だからまあ今日は、比較的いろんなことをやっているお坊さんが集まっている状態ではありますね。
──お葬式の時くらいしか接点がないからわからなかったですが、お坊さんもいろいろやってるんですね。
ブックオフと仏教って、「物を循環させる」っていうキーワードで繋がる気がしますね。お葬式とかお墓みたいな「人が亡くなった時の作法」が決まっているのは、誰かが亡くなった時の不安や悲しみを、一つのルーティンに落とし込んでできるだけ軽くするためだと思うんです。
仏教にもいろいろ宗派があって、故人と別れた後の関係性についてはさまざまな意味が与えられていますが、その目的はすべて「手放す」ためだといえるかもしれません。それを人間ではなく本や物でやっているのがブックオフ……というのはちょっと思います。
「何かを手放す」というトレーニングって、仏教ではとても大事なんです。お布施ってお坊さんにお金を渡すことだと思われていますけど、あれは自分が執着しているものを手放す、他者に施すというトレーニングでもある。そういったトレーニングを、日常の中で繰り返してちょこちょこと小さな物を手放していくことで、自分の執着から離れていく。
──どうしてそんなに執着を手放す必要があるんでしょうか?
人間、どうしても最後は死ぬわけですよ。死を受け入れて、最終的には何もかもを手放さなくてはならない。逆に手放せないと、次第に苦しみが大きくなる。「手放さないといけないのに手放したくない」という気持ちのズレが、苦しみを生み出すわけです。だから日常的に手放すことをトレーニングしていけば、その苦しみを軽減することができます。
ある意味では、ブックオフというのは物の葬儀場に近い性質があるのかもね。
確かに。僕らが人に対してやっているようなお葬式を、物に対して行える場所かもしれない。
手放した物が改めて人の手にわたっていくことは、またひとつの物語に乗せることだし、手放したことに納得させるという点で、お葬式に近いのかもしれない。
──そういう意味では、ブックオフは「手放したけど無駄にはならなかった」という気持ちになりやすい場所だと思います。ブックオフって、買い取ったもののリユース・リサイクルが90%以上なんですよ。
へえ~。
──値段がつかない物でも引き取り自体は可能ですし、海外で役に立ったりリサイクルされたりしているんです。なので、「捨てる」ことに対してネガティブな気持ちがある人は、多少楽な気持ちで「物を手放す」ことができるスポットとして、ブックオフを捉えてもらうのもアリかもしれません。
「捨てる」ってすごくネガティブなイメージで捉えられがちな行為ですけど、先ほどから話に出ているように仏教においては非常に大事なことなんですよ。
この「捨てること、手放すことは大事なこと」という概念を1つ挟むと、ブックオフに物を持ち込むことと仏教を接続できそうですよね。「捨てる」のアップデートというか。
ただ、身の回りのもの何もかもを捨てれば執着を捨てたことになるかというと、多分そうもならないはずなんですよね。本当に自分にとって必要なものが何かを何度も問い直していくのが、大事だと思います。ブックオフに物を持ち込むというのはそれを学ぶ機会になるだろうし、そういうことができるお店が街中にたくさんあるのはいいことだなと思います。
ついに結果発表! 3,000円に最も近いのは誰だ!?
──いよいよ結果発表なんですが!
テスト返ってくる時みたいやな……。
(釈)大智くんはなんだかんだで3,000円超えてそう。
いや〜、超えてないと思うよ。
誰からいく?
もう稲田くんが1発目でよくない?
いや〜待って待って! 怖い! この企画舐めてたわ! 今になってめっちゃリアルになってきた! 値段つけられるのってこういう感じなんか!
西日本支社エリアマネージャー
高野徳利さん
2016年入社。 自称「良くも悪くも楽観的な性格」。スポーツ観戦とラジオを聞くことのほか、最近は甥と姪に物を買い与えることにも楽しさを見出している心優しき叔父。
お品物をお持ち込みくださいまして、ありがとうございました! 他のお客様と同じように、嘘偽りなく査定させていただきました。
おおーー!! 3,430円! すごくね!?
ヤバい!
お持ち込みいただいたタワーファンが夏向けの製品なので、ちょっと査定額が下がってしまっておりまして……。もう1〜2ヶ月早く持ってきていただければ、1,000〜2,000円高く査定できました。
あ〜、そういうのがあるのか……。でもその結果3,000円に近づいたからいいのかも……? ありがとうございました! 嬉しい!
稲田さん一押しだったタワーファンは査定額1,500円。『チェンソーマン』と『ブルーピリオド』が積み重なり、結果的に3,000円に肉薄しました。続いては大量の古着と書籍を持ち込んだ釈さんの結果発表!
次か〜。怖いな!
お持ち込みありがとうございました! 査定額は以下となっております。
おおお、3,708円! いい勝負!
え〜! すごいじゃん! ちゃんと勝負が成立してる! でも一旦僕の勝ちね。
見立て通り、バーバリーのカーディガンが一番高かったんや。あとは数を持ち込んだのがよかったっぽいね〜。
事前に釈さんが「これは高いのでは」と話していたバーバリーのニットカーディガンは、700円という査定額に。その他にも、リーバイスのジーンズは400円という値段がつきました。これに加えてとにかく大量に持ち込まれた書籍で金額を稼ぎ、稲田さんの査定額を上回る結果に! そしてラストは藤井さん!
う〜ん、こうなったら3,000円ちょうどを狙いたいな!
稲田くんが3,430円だから、3,000円プラマイ430円の中だったら勝ちだね。
2,500円くらいだったらどうしよ。
いや、今までの感じ見てたら、多分もうちょいいけるから。
うはははは! すごい! 5,000円超えちゃった!
めちゃくちゃいってる!!
何がそんなに高かったんだろう……あ、L.L.Beanのブーツがけっこういってるのかあ……。
総額5,510円という、3人の中でも最高額の査定額を叩き出した藤井さん。L.L.Beanのブーツが1,100円で売れた他、27型のモニターが1,700円、フェンダーのアンプが1,000円と、高額アイテムが多かったのが査定の要因でした。ちなみに、レジスターは査定額150円。
──ということで、優勝は稲田さんです!
やった〜!
いい勝負でした。
査定額的には僕が1番安かったわけですけどね。いや、ちゃんと企画が成立してよかったよ〜。
──思いのほか白熱して、こちらとしてもありがたかったです! ブックオフと仏教というのが意外に掘りがいのありそうなテーマなのも、とても興味深かったですし。
欲を少なくし、自分がいかに満ち足りているかを知ることが大事だという「小欲知足」という言葉があります。自分にとって必要な物がなんなのかを問い直すことが仏教では大事なんです。物を売って手放すことで、それがちょっとだけ理解できるのでは、という気がします。またひとつブックオフに学ばせていただいたな、という感じですね。
──お坊さんらしい締めの言葉、ありがとうございます!
というわけで想像以上に熾烈なバトルになった「3,000円ブックオフ」スピンオフ。お坊さんらしからぬ持ち込みアイテムから、お坊さんならではの気付きとブックオフの面白さが生まれてくるという展開となりました。
単に物を捨てるのではなく、意識して手放すことで自分にとって何が大切か見つめ直す。「手放すこと」と「リユース」の思わぬ含蓄について考えながらブックオフを利用すれば、より精神的に豊かな生活を送るためのヒントが見えてくる……それもまた、ブックオフの魅力なのかもしれません。
執筆:しげる
PHOTO:井川拓也
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