夏の日の釣り
釣りの歴史は古い。博物館に行くと、動物の骨で作られた釣り針が展示されていたりするので、我々人類は遥か昔から釣りをしてきたということだろう。スーパーに行けば魚は買えるけれど、自分で釣って食べる魚も格別だ。
僕が釣りを最初にしたのはいつだっただろうと思い出す。そう、あれは小学生の頃だった。季節は夏で、僕は鹿児島に住んでいた。錦江湾(きんこうわん)にサビキを垂らして、アジを釣ろうとしていた。隣には母親がいて、その晩にはアジの南蛮漬けが出た。つまり釣れたということだ。
僕は今も釣りをする。熱心な釣り人ではないけれど、時間があると魚を模したルアーというものを投げて魚を釣る。釣りには大きく2種類ある。餌を使う釣りと、餌を使わない釣りだ。今の僕はルアーを使う釣りを専門にしている。
ルアーの釣りでは投げて待つ、ということはあまりない。リールを巻いてアクションをつける必要がある(魚に「これは餌だ!」と勘違いさせるために)。そのような釣りもいいのだけれど、ゆっくりとした釣りもしたくなった。小学生の頃のような餌釣りを。夏が僕にそう思わせたのかもしれない。
ブックオフで釣具を買う
ブックオフで釣具を売っていると聞いた。僕は餌釣りをほぼ知らないので、店員さんにおすすめを聞いてもいい。小学生の頃の僕とは違う。今では少し社交的になって、誰かに聞くことだってできるのだ。
ブックオフでは2022年から釣具に力を入れているそうだ。青木さんは釣具担当で、ブックオフ歴は20年。釣り歴は30年。ブックオフに勤める前から釣りをしている。青木さんに僕がしたい釣りを伝えた。少しのんびりで、魚の大小は問わなくて、もちろん釣れると嬉しい、と。
ブックオフには、リールもロッドもルアーも針も餌も一通り揃っていた。手ぶらでブックオフに来て買い物をすれば、釣具屋でもないのに、そのまま釣りに行ける感じだ。初心者が何を買えばいいのかというのも書いてあったし、昨日の釣果もあったし、ちょっとした釣具屋みたいだった。
売り場には新品のロッドとリールと仕掛けのセットも置いてある。釣具屋でも売っているものと同じだ。ただブックオフの良い点は、そのようなセットを買わなくても、中古の釣具が定価の半額以下で安く買えることだ。
ロッドはダイワ「NEO-VERSAL」、リールはシマノ「セドナ2500S」を選んでもらった。釣具界の二大巨頭の組み合わせだ。セドナ2500Sには糸が巻いてあるのでこのまま釣りに出かけることができる。
今回はサビキ釣りをすることになった。カゴに餌のオキアミを入れて、その下に針がいくつかついているものだ。僕が小学生の頃に初めてした釣りと同じ。あの日、母は釣れすぎだと笑っていた。
サビキ釣りの問題をあえてあげるなら、オキアミが臭いことだ。釣り人的には問題ない匂いなのだけれど、その後に電車で帰ることとかを考えると少し問題。その問題を解決するのが「アミ姫」だ。フルーティーな香りなのだ。しかも赤い方はラメ入りなんだぜ(ラメが釣りに有利に働くことはないけど、かわいいからそれでいいのだ)。
釣具を買った後に他のコーナーも見た。なんでもあった気がする。洋服も本も家電もゴルフ関連のものも、おもちゃもゲームも。子供の頃に来ていたら買ってと駄々をこねたと思う。今はこねない。買えるから。ブックオフの素晴らしい点は僕でも買える値段なことだ。
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シマノの最上機種の「ステラ」というリールがガラスケースに入っていた。これは買えない。高いから。もともとめちゃくちゃ高いのだ。釣りを知らない人は驚くかもしれないけれど、今リールは10万円を超えるものもある。
テーマパークのような楽しさがあると思う。時間を忘れて見ていたら、青木さんがそろそろ釣りに行きませんか? と声をかけてくれた。そうだ、今日はこのまま青木さんと釣りに行くのだ。「釣り<ブックオフ」になっていた。
夏の空の下
今回は餌釣りが本当に久々だったので、青木さんを釣りに誘った。ブックオフに一緒に釣りに行ってくれるサービスはないのだけれど、今回は特別だ。車で20分ほど走り「磯子海づり施設」を訪れた。青木さんもよく来るそうだ。
釣り場で係の方に「釣れていますか?」と聞いた。「昨日は釣れていましたね」と教えてくれた。昨日か、と思う。空いている場所を探しながら釣り人の後ろを歩く。他の釣り人のバケツの中を覗く。何もいなかった。ただの海水の入ったバケツだった。昨日は釣れていたかもしれないが、今日は違うのだ。
釣り人は、いや、僕だけかもしれないけれど、「今日は釣れる」と思ってしまう。だって、今日のオキアミはフルーティーな香りなのだ。魚だってフルーティーを求めているかもしれない。ロッドもリールも買ったのだ。釣れないはずがない。
青木さんが先制攻撃をした。「釣れない釣りもいいんですよね」と。わからなくはない。釣り糸を垂らす時間はワクワクとウキウキで楽しい。のんびりとした時間は最高の贅沢だ。でも、釣りたいのだ。ブックオフでは駄々をこねなかったけれど、ここでは「釣りたい」と僕は駄々をこねたい。
何その投げ方!
聞くと、この施設は上投げというのか、ロッドを上から後ろに振りかぶって投げることが禁止されている。そのため「磯子投げ」という下から振り子の原理で投げる方法が推奨されているそうだ。青木さん、教えてください、僕は釣りたいのです。
青木さんが選んでくれたロッドはよかった。9フィート(2.7m)あるし、使ってみたところ、海での釣りは餌でもルアーでもなんでもできる感じだった。リールもよかった。トラブルみたいなことがない。安いリールは糸が絡んだりといろいろ大変なのだけれど、今回は一度もトラブルは起きなかった。
魚を“見た”
道具がいいから釣れるというものではない。ただいい道具を使っていると、青木さんが言うような「釣れなくても楽しい」は体感できる。投げる動作がスムーズだし、ロッドを上下させた時のしなり具合もいい。釣れない釣りほど、いい道具が大事かもしれない。
青木さんは湘南生まれで昔から湘南でよく釣りをしていたらしい。キスとかマゴチを釣っていたんだそうだ。ぜひ釣ってみたい魚種だ。ただ僕は思う。今はもうなんでもいいから釣り針にかかってくれと。メダカでもいい。海にいないけど、サイズも問わないということだ。
「釣れないなぁ……」
「釣れませんねぇ……」
「あっ」
「なんですか?」
「あのクレーン、キリンみたいでかわいいですね」
「キリンかなぁ、ブラキオサウルスだなぁって思ってました」
やがて思う。何も釣れない釣りもいいと。海風が気持ちよく、空は青い。アミ姫を興味本位で触ったせいだろう、手からフルーティーな香りがする。このような時間もいい気がしてくる。いつもの忙しない日常が忘れられる気がする。
釣れない時間もまた素晴らしいと悟った時だった。僕のロッドがしなり、魚が海から姿を現した。コノシロだった。でも、次の瞬間外れて、海へとコノシロは戻っていった。めちゃくちゃ落ち込んだ。悔しい。「釣りたかった」と先の悟りを全て忘れるほど落ち込んだ。
青木さんと惜しかったと盛り上がった。どうせ根掛かりと思いフッキング(※)をしなかったのが問題だろう。そのような問題点を挙げ、次に向けて改善していく。結果、人は釣りにハマるのだ。ブックオフならこの入り口が安いので嬉しい。
※「フッキング」
魚がエサやルアーに食いついた時に、魚の口へ針をしっかりと掛ける動作のこと。“アワセ”とも呼ばれる。
結局、3時間いたけど、一匹も釣れなかった。でも魚は見た。それでいいではないか。釣りたいと散々言ったけれど、楽しい時間だった。やはり夏の日とのんびりした釣りは相性がいいのだろう。暮れていく空を見ながら家に帰った。磯子の空も綺麗だったけれど、僕の家の近くの多摩川の空もまた綺麗だった。多摩川では何が釣れるのだろう、ブックオフに釣具を買いにいかないと。
[店舗情報]
BOOKOFF SUPER BAZAAR 横浜東戸塚オリンピック店
釣りコーナーが充実した店舗。2022年にリニューアルし、ゴルフ用品のほかトミカ・プラレール・レゴなどのホビーの売場も拡大しています。
住所:神奈川県横浜市戸塚区川上町52-1
電話:045-820-2864
営業時間:
10:00~21:00
10:00~19:00 (ブランド品売場)
HP:https://www.bookoff.co.jp/shop/shop20379.html
【釣り具が充実している店舗は他にも!】
B・SPORTS 仙台松森店
BOOKOFF SUPER BAZAAR 綱島樽町店
BOOKOFF SUPER BAZAAR カインズモール名古屋みなと店
BOOKOFF SUPER BAZAAR アグロガーデン神戸駒ヶ林店
BOOKOFF SUPER BAZAAR 54号広島八木店
TEXT:地主恵亮
PHOTO:地主恵亮、ブックオフをたちよみ! 編集部
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